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メールマガジン「週刊KU-MA」 第61号          [2009.9.2]


■目次

(1)YMコラム
     「政権交代」
(2)ワンダフル宇宙
     「中国のロケット打上げ、ままならず」

(3)宇宙関連ニュース「宇宙茫茫」

■YMコラム

 政権交代

 8月30日、自公政権が崩れた。無駄遣い追放と官僚主導の打破という二 つの公約を中心とする鳩山内閣の船出は9月半ばになる由。民社党自身が 圧勝の原因を何に求めているかが、直接今後の展開に響いてくるだろう が、それと同時に新しく議員になった人たちの本当の意味での資質が試 される日々が始まる。

 さまざまな生活上の要求の中に、この国の出口を見つける課題が普遍 的にのしかかっている。この国を覆ってきた暗雲は、年を追うごとに厚 く黒々としてきているが、議員としての第一歩を踏み出した人々には、 未来を展望し、日本の新しい時代を建設するという挑戦の心を何よりも 持って欲しいものである。それは、私の好きな一登山家の言葉がいつも 気になるからである:

  民族が大きくたくましく栄えたのは、
  その息子たちが、冒険を愛したからである。
    そして、民族が衰え没落したとすれば、
    それはその息子たちが危険への喜びを失ったからにすぎない。
                ―― ヘンリー・ヘーク

 宇宙関係であまりよくないニュースが続いている。アメリカのオーガ スティン・レポートが「オバマ政権の提出している宇宙予算では、到底 宇宙進出の未来は論じられないよ」と悲鳴を上げたのを皮切りに、アメ リカは月探査機LCROSSの燃料枯渇問題も抱え、そして転んだ子を蹴飛ば すように、森林火災が惑星探査の牙城JPL(ジェット推進研究所)の周 辺を襲っている。韓国の衛星打上げ失敗、インドの月探査機チャンドラ ヤーンの交信電波途絶など、「悪いことは重なる」ものである。

 そんな中で刮目すべきは、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)がロシアのソ ユーズを全面活用して独自の有人飛行への道を開始する構えを見せてい ることである。ソユーズを使って毎年数人の「ヨーロッパ人」を宇宙へ 送る方針をほぼ確立したのではなかろうか。今やESAはEUの執行機関と 化している実態はあるが、一方でヨーロッパには、科学・技術のことは その専門家の議論に注意深く耳を傾ける伝統が、数百年続いている。

 17ヵ国の加盟国を持つESAには知恵者が多い。加盟国がこれだけある と、動きの鈍くなる欠陥はあるが、同時に世界の流れをしっかりと見る こともできる。アメリカの有人飛行への勢いの衰退を感じ取った人たち の大きな流れの存在が推察される。

 日本の有人飛行に関する議論は、「金がない」という単純な表現で一 掃されることが多かったのであるが、それを「一掃」してきたのは官僚 である。どの省の官僚の発言権が一番大きいかは言わずもがなであるが、 財務省の官僚が異常に大きい力を持っているこの国では、他省庁の官僚 は、抵抗は見せるものの最後は屈する。有人飛行にもいろいろなやり方 がある。1960年代にソ連との必死の闘いの中で築かれて来たアメリカ式 の有人飛行は、まさに「行け行けどんどん」で、よく言えばオーソドッ クス、悪く言えば金を湯水のように使う正面突破の有人システムの構築 だった。日本は、日本の独自のやり方で有人飛行への道を頭を使って柔 軟に遂行するべきである。

 この場合、出発点にあるべきは、「官僚の許可」ではなくて、現場か らの具体的で強力な問題提起である。ヨーロッパとの協働という行き方 もある。9月に予定されているHTV(無人宇宙ステーション補給機)の有 人化から出発する選択もある。議論して安上がりの方法を見つけること が肝腎で、それがなければ、自己の分野の予算を削られることに疑心暗 鬼の宇宙部落や「有人は高い」という偏見に凝り固まった財務省を納得 させることは不可能だろう。どんなに非公式な議論でもいい、具体的で 説得力を持つ案を提出することである。予算をつけてもらうことから議 論を始めようとするやり方は、まさに既に「親方日の丸」の考え方が伝 染しているのである。宇宙開発を20世紀の初めのころに立ち上げた貧乏 な先達たちの考え方に回帰して、この国の宇宙進出のやり方を作りなお す時代がやってきているように思う。

 他方、有人を本格的に展開するには上からのアプローチももちろん大 事で、これまで「金がない」の一点張りで阻止されて来た有人飛行の 「具体的なやり方の議論」を、新しい政権が前例にとらわれないで大胆 に広く開放できるか。無駄遣いや官僚主導、年金問題、老人介護、格差 追放、……山積するさまざまな諸問題の中に埋没しがちな日本の「未来 への夢」を、有人飛行を軸にして切り拓いてほしい――新政権の大事な 試金石として暫くは注目していきたい。

(YM)

■ワンダフル宇宙

 中国のロケット打上げ、ままならず

 8月31日(月)に打ち上げられた中国の「長征3Bロケット」が、インド ネシアの通信衛星「パラパD」を目標の軌道に投入することに失敗しまし た。現在パラパD(図1)は、軌道傾斜角22度、遠地点2万km強、近地点 200 kmにとどまっています。衛星搭載の推進システムで今後どこまで軌道 変更が可能なのかは不明です。

 http://www.ku-ma.or.jp/img/090904-01.jpg
 長征ロケットは、実は1996年以来の打上げ失敗なので、これは世界のロ ケット打上げ市場の分野ではちょっとした「事件」ですね。長征3Bは3段 式ロケットで、全長54.84 m、直径3.35 mで、頭の部分がアンマーヘッド 型に太くなっており、ノーズフェアリングの直径は4.2 m、11.2トンを地 球低軌道へ、また静止軌道へは5.1トンを運ぶことができます。1段目の加 速を増強するため4本の補助ロケット(液体燃料)がついています。初号 機(1996年)には致命的な失敗がありましたが、以降は連続して10機の衛 星打上げに成功してきています。だから今回は12号機だったんですね。

 打上げは中国西南部の西昌衛星発射センターから9:28(世界時)に行 われ(図2)、1段目・2段目が順調に飛行し、液体水素/液体酸素の3段 目(YF-75エンジン)の第一回燃焼も無事に行われました。事件は、発射 後約20分、3段目の再着火の時に起きた模様です。再着火に失敗したか、 再着火直後に異変が起きたのか、その辺はこの原稿執筆時点では不明です。

 http://www.ku-ma.or.jp/img/090904-02.jpg
 長さ12.3 m、飛行中に16トンの推力を生み出す3段目は、他の長征ロケ ットに使われており、第一回の燃焼で地球低軌道に衛星を投入し、再着火 後に静止トランスファー衛星(卵型)に運ぶ役割を担うものです。現在の 軌道高度から推定すると、再着火は起きたが、途中で燃焼がストップした 公算が大きいと、私は睨んでいます。この3段目は、これまで一度も失敗 したことのないものなので、関係者もショックでしょうね。ただし、衛星 は正常に地上局と交信しており、もともとトランスファー軌道から静止軌 道まで軌道変更するための推進システムを衛星が持っているので、それを 使ってどれだけ軌道を修復できるか、現在鋭意検討中なのでしょう。

 搭載されていたパラパD衛星(4.1トン)はフランス製で、1996年以来軌 道にあったパラパC2 衛星(ボーイング社製)が2011年に寿命が尽きる見 通しだと言うので、その代替として打ち上げられたもの。C バンドとKuバ ンドのペイロードを搭載し、インドネシア、ASEANの国々、中東地域(要 するにオーストラリアからインドまで)をカバーしながら、これから15年 間にわたって働く予定でした。携帯電話、固定電話、データ通信などのた めの通信衛星です。

 上記の1996年の長征3Bロケット打上げ失敗の時のことは、鮮明に思い 出せます。打上げ直後(発射の2秒後)にロケットの飛翔経路が大きくそ れて行き、飛翔保安システムを装備していなかったロケットが殆ど真横に 約1分間飛んで近所の村を直撃し、この村の多くの住民が亡くなりました。 そのすぐ後に西安で国際会議があったのですが、そこで中国の関係者に 「先日のロケット打上げは大変でしたね」とお悔やみを言ったところ、返 って来た言葉――「まあロケットの打上げというものは危険なものなので、 あれくらいは死ぬでしょう」。そのシャアシャアとした態度には、本当に 驚いたものです。打上げが2月14日だったために「聖ヴァレンタインの悲 劇」などと呼ばれます。

 なお、「長征」とは、中国革命の過程における一大事件です。中国国民 党政府が中国共産党に対する攻勢を強めたのに対し、1934年から1936年に かけて、共産党指導部は江西省瑞金から陝西省延安に至るまで転戦しまし た。この間の国民党勢力との戦闘などによって10万人の兵力を数千人にま で減らしましたが、蒋介石政府が抗日のため共産党との妥協に転じたため、 この大遠征は終わりました。途上で開催された遵義会議などにより、毛沢 東の指導権が確立されたことは有名です。現共産党政権は、この転戦を 「大長征」と呼び、現代中国建国に至る歴史的転換点と評価しています。 これが中国の衛星打上げロケットのシリーズ名にかぶせられているわけで す。英語では“Long March(長征)”あるいは“LM”でしょうが、中国語 の発音を正確になぞった“Chang Zheng(長征)”あるいは“CZ”の方が 最近では多用されています。

 また、今回の打上げが行われた西昌衛星発射センター(図3)は、北緯 28度14分10.16、東経102度2分8.44に位置し、西昌市から北西に約60 kmほ ど離れた峡谷の中、海抜約1500 mの高地に建設されています。中国の衛星 発射センターとしては、他に甘粛省の酒泉衛星発射センター、山西省の太 原衛星発射センターがあますが、静止軌道への打上げを行っているのは西 昌のみです。西昌は酒泉や太原より低緯度です。だから西昌が静止軌道へ の打上げには適しているんですね。

 http://www.ku-ma.or.jp/img/090904-03.jpg

 何はともあれ、インドネシアが、ミッションの一部でも達成されること を祈っています。

YM

■宇宙茫茫ヘッドライン

【090831-01】 韓国初の人工衛星打上げ、不調に終わる…衛星フェアリング分離に失敗
【090831-02】 STS-128 Discovery、打上げとISSとのドッキング成功
【090831-03】 NASAの月インパクト機LCROSS、推進薬を無駄に使い過ぎる事態に
【090831-04】 インドの月探査機Chandrayaan-1、通信が途絶えミッション終了宣言へ
【090831-05】 火星で砂嵐始まりSpiritの救出急務に…JPLでは2種類の砂での試験実施
【090831-06】 Ares Iの1段固体ロケットモータの地上燃焼試験、点火の20秒前に中止
【090831-07】 NASA、中小企業向けの2種類の研究費助成対象候補16件選定
【090831-08】 スイスのCubesat、インドのロケットで打上げ
【090831-09】 ギアナからのSoyuz-STの打上げは2010年4月初めに
【090831-10】 JAXA、グアムのNOAAの観測所内に準天頂衛星のモニタ局設置
【090831-11】 イーグル工業、RocketdyneからJ-2X用のメカニカルシールの開発を受注
【090831-12】 気象庁、“ひまわり8号・9号”の運用を民間委託の方針
【090831-13】 JAXA、小型柔構造インフレータブル飛翔体の展開実験を気球で実施
【090831-14】 宇宙開発戦略本部、GXの開発着手先送りの方針…エンジン開発は継続
【090831-15】 文科省/JAXA、2010年度から新型ロケット開発の予算要求方針
【090831-16】 JAXAのウェブサイト内の注目記事へのリンク

注:今回の記事中に2010年度概算要求に関する記事が3件あるが、民主党政権による概算要求の見直しが行われた場合には記事内容と異なることになる可能性がある。

【090831-01】
韓国初の人工衛星打上げ、不調に終わる…衛星フェアリング分離に失敗

8月25日、韓国は初の人工衛星打上げ用ロケット“羅老”(KSLV-1)の打 上げを行ったが、搭載した質量100kgの衛星STSAT-2の軌道投入に失敗した。

 http://www.koreatimes.co.kr/www/news/tech/2009/08/129_50676.html

打上げ後のデータ分析の結果、ロシア製の1段のエンジン、韓国製の2段 の固体ロケットモータの燃焼には異常はなかったが、打上げ後216秒で開 頭分離するはずの衛星フェアリングの半殻が分離しなかったことが判明し た。

打上げ後540秒の衛星分離時点で、ロケットは予定の約300kmより高くま で達していたが、速度が足りず、地球周回軌道(予定の軌道は300km×1500 km)には投入されなかった。なお、分離しなかった衛星フェアリングの半 殻は衛星分離の時点で分離したことが確認されている。

 http://www.koreatimes.co.kr/www/news/tech/2009/08/129_50747.html

【090831-02】
STS-128 Discovery、打上げとISSとのドッキング成功

8月28日23:59EDT(29日12:59JST)、NASAはケープカナベラルからSTS- 128ミッションDiscoveryの打上げを行い、ISSへ向かう軌道への投入に成 功した。(注:EDTは米国東部夏時間。以下の記述は特記以外EDT。)

この打上げは25日早朝に行われる予定であったが、天候不順で1日延期 となり、翌26日の01:10を打上げ時刻としてカウントダウンが開始され た。その中で25日の15:45から開始された推進薬の重点作業の終了近くで、 液体水素タンクの注排液弁を閉じる指令を送ったところ、閉まったことが 確認できない事態となり、カウントダウンは中断され、そのまま打上げ延 期となった。

その後、液水を抜いた後で繰り返しバルブの開閉を行ったが本来の信号 でのバルブ閉の確認は引き続きできないものの、バルブの作動異常はなく、 27日の午後に行われた検討会議で、別の手段でバルブの閉が確認できれば 打ち上げても良いとの判断が下り、カウントダウンが再開されたもの。な お、この際、28日未明の打上げ機会は見送られた。

クルーは、コマンダーが海兵隊のFrederick W. Sturckow、パイロット は空軍を退役したKevin A. Ford、ミッションスペシャリストはJohn D. Olivas、Patrick G. Forrester、Jose M. Hernandez、Nicole Stott及び ESAの宇宙飛行士(スウェーデン人)Christer Fuglesangの5人。Nicole StottがISSの長期滞在クルーのTimothy Kopraと交替する。

STS−128の主ミッションは、“Leonardo” Multi-Purpose Logistics Moduleの輸送であり、この中には、収納用のラック、冷蔵庫、就寝用のコ ンパートメント、空気清浄装置、2基目のトレッドミル、食料、衣類、予 備品等が収められている。トレッドミルは先にNode 3の名前を募集した時 の経緯があり、コメディアンのStephen Colbertの名前から“COLBERT”と 名付けられている(関連記事:【090420-12】)。

 http://www.nasa.gov/home/hqnews/2009/jul/HQ_09-196_STS-128_Launch.html

打上げ後のクルーの就寝中に地上の飛行管制チームが、オービタの機種 の横にある前方の姿勢制御用のスラスタの1つからリークがあることを発 見し、対策として、このスラスタと反対側のスラスタへの配管のマニフォ ールドを閉じることとした。これにより2つの前方スラスタが使えなくな ったがミッション遂行に影響はないとしている。

 http://www.nasa.gov/mission_pages/shuttle/shuttlemissions/sts128/news/STS-128-02.html

29日には、ロボットアームとセンサ付き検査用延長ブームを用いて、機 体外部の耐熱シールドの点検を行い、画像を地上に送った。

 http://www.nasa.gov/mission_pages/shuttle/shuttlemissions/sts128/news/STS-128-03.html

30日にDiscoveryはISSに近付き、ドッキングの前にISSの下方約180mで 機体を縦に360度回転させ、ISS内部から機体外部の写真撮影を行った。こ の画像も地上に送られ、耐熱シールドの健全性確認に用いられる。ドッキ ングの際のマヌーバには通常は6基の推力11kmfの姿勢制御用スラスタを組 み合わせて使用するが、打上げ直後に発見されたリークのために前方の2 基が使えない状態となっているので、今回は初めて推力395kgfの軌道変更 用のスラスタが使用された。

ドッキングは30日19:54に無事完了し、21:33には7人のクルーがISSに 入り、再び13人での共同運用が開始されることとなった。

その後直ちに、Nicole StottとISSの長期滞在クルーのTimothy Kopraの 交替(緊急時に使用するSoyuz宇宙船のシートライナーの交換)が行われた。 Stottは今後3ヶ月間ISSで過ごすことになるが、家には7歳の男の子を残し ている母親である。因みに、STS-128の7人のクルーは全員子持ちで、子供 の数は合わせて20人(5×2+3+2×3+1)になる。

 http://www.nasa.gov/mission_pages/shuttle/shuttlemissions/sts128/news/STS-128-05.html

【090831-03】
NASAの月インパクト機LCROSS、推進薬を無駄に使い過ぎる事態に

8月25日、NASAは10月初めに月への突入を行う予定のLunar Crater Ob- servation and Sensing Satellite (LCROSS)に不具合が生じ、かなりの量 の推進薬を消費してしまったことを明らかにした。

NASAが異常に気付いたのは、しばらくの間、地上局との位置関係が悪い ために途絶えていたLCROSSとの通信が22日に回復した時点で、姿勢制御用 のスラスタが必要無いのに繰り返し作動し、推進薬を浪費している状態で あった。

原因究明の結果、LCROSSの姿勢角の変化率を検知する慣性基準装置(In- ertial Reference Unit:IRU)が不具合を起こしており、それを検知した 搭載ソフトウェアが姿勢基準をスター・トラッカーに切り替えたところ、 スター・トラッカーの出力に想定以上のノイズが乗っており、それを姿勢 角の変化率として認識した制御系が、決められた姿勢を保つためにスラス タのオン・オフを繰り返していたことが判明した。その後、IRUの修復に 成功し、通常の状態に戻ったが、それまでに、全搭載量306kgの推進薬の うち140kgを無駄に消費してしまっていた。なお、もしIRUの不具合が再発 しても、スラスタの無駄な作動には繋がらない様に、スター・トラッカー の出力に対する姿勢制御系の感度を下げている。

NASAでは、ミッション達成に必要な推進薬は何とか残っているとしてい るが、今後は、ミッション達成にクリティカルではない動きは制限せざる を得ないともしている。

 http://www.spaceflightnow.com/lcross/090825fuel/

【090831-04】
インドの月探査機Chandrayaan-1、通信が途絶えミッション終了宣言へ

8月30日、インド宇宙研究機関(ISRO)は、この日の早朝に月を周回中の Chandrayaan-1との通信が途絶えたことを明らかにした。

その後、通信の回復努力を行ったが、回復せず、そのままミッションの 終了を宣言する事態となった。2008年10月に打ち上げられ、2年間の運用 が想定されていたが早期のミッション終了となった。なお、ISROではハイ レベルの委員会を設けて、突然のミッション終了の原因究明に当たるとし ている。

予定より早いミッション終了であったが、ISROでは約7万枚の画像デー タを含む多くの情報を取得することができたことから、ミッションの目的 の95%は達成できたとしている。

 http://beta.thehindu.com/news/national/article11906.ece

【090831-05】
火星で砂嵐始まりSpiritの救出急務に…JPLでは2種類の砂での試験実施

8月26日付けのSPACE.comが伝えるところによると、火星で砂地から脱出 できないでいるSpiritの周辺で砂嵐が始まっており、強風が砂を飛ばして いる間は良いが、風が弱まって砂が降下してくる様になると、Spiritの太 陽電池パネルが砂に覆われて発生電力の低下を招く事態となるので、Spi- rit救出が急がれる事態となってきた。

救出策を探っているNASAのジェット推進研究所(JPL)では、フル装備の Spiritと同じローバと、装備品の無い軽量なローバを用いて、模擬の砂地 での試験を行っているが、更に砂の状態を車輪の摩擦力が小さい細かい粉 状のものと、かなり大きな摩擦力が期待できる状態のものを用意し、2台 のローバを2種類の砂の上で動かし、その結果を分析して、Spiritに送る コマンドを決めようとしている。

JPLでは、ここ1週間以内にはコマンドを決め、地上での全体を通したリ ハーサルを行いたいとしている。

 http://www.space.com/missionlaunches/090826-spirit-sand-storm.html

【090831-06】(関連記事:【090817-09】)
Ares Iの1段固体ロケットモータの地上燃焼試験、点火の20秒前に中止

8月27日、Alliant Techsystems(ATK) Space Systemsは、Ares Iの1段の 固体ロケットモータの初の燃焼試験に臨み、カウントダウンは順調に点火 の20秒前まで進んだが、そこで、推力ベクトル制御系の補助動力装置に不 具合があることが検知され、カウントダウンは中断され、そのまま試験は 中止となった。

点火の20秒前に補助動力装置の作動が始まるはずのところ、燃料が供給 されず、作動に至らなかったもので、何処かのバルブの不具合と見られて いる。

なお、27日夜の発表では、新しい試験日は9月1日以降になるとのこと。

 http://www.spaceflightnow.com/news/n0908/27dm1scrub/

【090831-07】
NASA、中小企業向けの2種類の研究費助成対象候補16件選定

8月28日、NASAはSmall Business Innovation Research(SBIR)プログ ラム及びSmall Business Technology Transfer (STTR)プログラムのフェ ーズ2の契約候補として、それぞれ12件及び4件、合計16件の研究課題を選 定したことを明らかにした。

SBIRは、小規模ではあるが高い技術を有する企業が行う、NASAの科学及 び航空宇宙の研究目的にインパクトを与えるような新しい技術開発への助 成プログラムで、STTRは中小企業と非営利の研究機関が共同で実施する 「市場化が期待される研究開発」への助成プログラムである。

今回の選定は何れも先に行われた規模の大きい選定への追加選定となる もので、SBIRは2008年10月に142件(関連記事:【081103-12】)、STTRは20 09年4月に16件(関連記事:【090420-13】)の選定を行っている。

今回選定分の契約が全て結ばれると助成の規模はSBIRが720万ドル、ST TRが240万ドルとなる。

 http://www.nasa.gov/home/hqnews/2009/aug/HQ_09-201_SBIR.html

【090831-08】(関連記事:【090817-07】)
スイスのCubesat、インドのロケットで打上げ

8月25日付けのインドのdnaindia.comは、9月にインドが打ち上げる海洋 観測衛星Oceansat-2に相乗りで打ち上げられる小型衛星の一つであるスイ スの学生が製作したSwissCube-1は、当初欧州のロケットでの打上げを想 定していたが、遅れが避けられない状況になったことから、リーズナブル な打上げ費用を提示したインドのロケットによる打上げを選択したもので あると報じている。

この衛星は、初めてのスイス製のCubesatで、製作したのはローザンヌ にあるEcole Polytechnique Federale de Lausanne (EPFL)の学生で、打 上げ費用を含んだ総プロジェクト費は30万ユーロであるが、多くの部分は 学生への手当が占めているとされている。

SwissCube-1は、太陽からの高エネルギーの放射が地球の高層大気にぶ つかることにより生じる緑色と藤色の大気光(airglow)を撮影すること及 び低廉な測位システムの実験を目的としている。

 http://www.dnaindia.com/scitech/report_univ-builds-first-all-swiss-satellite-choose-isro-for-launch_1285013

【090831-09】(関連記事:【090622-06】)
ギアナからのSoyuz-STの打上げは2010年4月初めに

8月25日、ロシアのProgress Design Bureauの責任者は2010年にずれ込 んだギアナ宇宙センタからのSoyuz-STの打上げは4月の初めに行われるこ とになると語った。 Progress Design Bureau ではギアナからの打上げに向けてSoyuz-2を改 良する作業を進めてきたが、既に3機の製造を終えているとしており、そ の内の2機が11月1日にはセントピータースブルクの港から送り出される予 定となっている。 Soyuz-STについては、6月のパリエアショーにおける関係者の発言とし て、新しい射点の建設作業に遅れが生じており、2009年12月の予定となっ ていた初打上げは難しく、2010年前半になるとされていたが、漸く射点で の作業も最終段階に入っている。

 http://en.rian.ru/russia/20090825/155922928.html

【090831-10】
JAXA、グアムのNOAAの観測所内に準天頂衛星のモニタ局設置

8月25日、JAXAと米国海洋大気庁(National Oceanic and Atmospheric Administration: NOAA)は、JAXAが2010年度に打ち上げる予定の準天頂 衛星システム(Quasi-Zenith Satellite System:QZSS)の初号機からの信 号を追跡監視する地上局をグアムに開設したことを明らかにした。

QZSSは常に日本の天頂付近に1基の衛星が見える様に複数の衛星が準天 頂軌道と呼ばれる赤道面に対して傾斜した地球同期軌道(周期が地球の自 転周期と同じ軌道)を周る衛星システムで、衛星が天頂に位置することに より、ビルや山などの障害物の影響を少なくすることが可能となり、ビル の谷間や山岳地帯でも通信が確保できる様になる。また、これをGPSと組 み合わせることにより、これまで測位が困難だった場所においても測位が 可能となる。

JAXAとNOAAは2008年からこのQZSSモニタ局のグアム気象観測所への設置 について調整を進めてきており、今回、JAXAのアンテナ及び受信機等の設 備をグアムのNOAA施設内に設置することと、そこで受信した観測データを NOAAと共有することで合意し、モニタ局の設置となったもの。

 http://www.noaanews.noaa.gov/stories2009/20090827_guam.html

【090831-11】
イーグル工業、RocketdyneからJ-2X用のメカニカルシールの開発を受注

8月27日、イーグル工業株式会社は、米国の代表的なロケットエンジン メーカであるPratt & Whitney Rocketdyneから、米国で開発中の次期有人 ミッション打上げ用ロケットAres Iの2段エンジンであるJ-2X 用のターボ ポンプに使用されるメカニカルシールの開発契約を受注したことを明らか にした。

同社は、日本ではH-IIA 及びH-IIBの液体ロケットエンジン用ターボポ ンプのシールを独占納入しているが、米国のロケットのメインエンジンの 開発に参加できることは画期的であるとしている。

 http://eir.eol.co.jp/EIR/View.aspx?cat=tdnet&sid=737988

【090831-12】
気象庁、“ひまわり8号・9号”の運用を民間委託の方針

8月23日付けのYomiuri Onlineによると、気象庁は2014年及び2016年に 打ち上げる予定の静止地球環境観測衛星“ひまわり8号及び9号”の運用を 民間企業に委託する方針を固め、その考え方に基づいて2010年度予算の概 算要求を行う。

1977年打ち上げの“ひまわり1号”以来、気象衛星は科学技術庁(当時) と相乗りの“科学技術衛星”(ひまわり1〜5号)や、国交省と組んだ“運輸 多目的衛星”(ひまわり6、7号)として打ち上げられたもので、運用はそ れらの省庁が行っており、気象庁としては運用業務の経験や地上施設を有 していないが、“ひまわり8号及び9号”は、気象庁単独での調達となって おり、運用も気象庁の責任で行うこととなる。

そこで、気象庁では、気象衛星の運用に初めて民間の資金や技術を活用 するPFI方式を導入することにしたもので、衛星2基の運用には、準備期間 を含めた20年間に200億円以上の経費が掛かるとされているが、これの削 減にも期待を寄せている。

委託を受けた企業が地上送信施設を調達し、衛星の姿勢や軌道を修正し たり、観測データの送受信を行うこととなる。受注には通信や放送など民 間の衛星で実績を持つ企業数社が関心を示しているとされている。

 http://www.yomiuri.co.jp/space/news/20090822-OYT1T01043.htm

【090831-13】
JAXA、小型柔構造インフレータブル飛翔体の展開実験を気球で実施

8月25日、JAXAは気球放球の連携協力拠点である大樹航空宇宙実験場か ら、小型柔構造インフレータブル飛翔体の展開および飛行試験を目的とし たB09-04実験として、2009年度第二次気球実験の初号機を放球し、目的と したデータの取得に成功した。

この気球は満膨張体積5,000m3の大型気球で毎分約300mの速度で上昇し、 放球の1時間30分後に実験場東方約50kmの太平洋上において高度24.7kmで 水平浮遊状態に入った。

その後、気球は約1時間20分の間、西北西に飛翔し、そこで指令電波に より観測器を気球から切り離した。切り離された観測器は実験場東方約30 kmの海上にパラシュートで緩降下し回収船によって回収された。

この試験は、新しい大気突入システム開発の一環として、東京大学、東 京工業大学、青山学院大学、東海大学との共同で実施したもので、実験機 は、水平浮遊時に、浮き輪型のフレーム(エアロシェル)を膨張させ、フレ ームに張られた膜面を展開した後に、ゴンドラから切り離し、約30分間の 自由飛行試験を実施し、エアロシェルの展開と降下していく画像及び飛翔 データを正常に取得した。

 http://www.isas.jaxa.jp/j/topics/topics/2009/0825.shtml

【090831-14】(関連記事:【081201-09】)
宇宙開発戦略本部、GXの開発着手先送りの方針…エンジン開発は継続

8月25日、政府の宇宙開発戦略本部は、「GXロケットの今後の進め方に ついて」と題する内閣官房長官、宇宙開発担当大臣、文部科学大臣及び経 済産業大臣連名の“お知らせ”を公表した。

これは、2008年12月2日に宇宙開発戦略本部が、「GXロケットの今後の 進め方については2010年度概算要求までに本格的開発着手に関する判断を 行うこと」、と定めたのを受けて行われた検討の結果を明らかにしたもの である。

2008年12月の時点で、今後の検討課題として残されたのは、@2段用の LNG推進系の技術的見通し、A需要の見通し、B全体計画・所要費用の見 通し、の3点であった。

LNG 推進系については、2009年6月末から実施してきた実機型エンジン による燃焼試験の結果により、今後、高空燃焼試験等の実施が残るもの の、推進系としての技術的な見通しは概ね得られたものと考えられ、更 に、宇宙空間での貯蔵性に優れていること、安全性が高いこと等から、 将来の軌道間輸送や月探査などでの利用が見込まれる技術であることを 踏まえて、今後、宇宙空間での実証を行い、その技術を確立すべきとし ている。

需要の見通しについては、今後、安全保障分野以外において、年に1 機程度の中小型衛星打上げの需要が想定されるが、安全保障分野におけ る需要については、次期中期防衛力整備計画の策定前の現段階において 見通しを持つことは困難であるとしている。

全体計画・所要費用の見通しについては、民間がビジネス展開の意欲 を示してはいるが、GX ロケットが価格競争力を有しているとの民間の 主張について、未だ判断に足る十分な定量的なデータを示されていない のが現状であるとしている。

以上を総合して、民間のビジネス展開の意欲については理解できるも のの、安全保障衛星の見通しが得られていない状況でのGX ロケットの 需要見通し、競争力のあるGX ロケット打上げのビジネスの成立性など について判断できないため、GX ロケットの開発への本格的着手を判断 できる状況にないとしている。

このことから、政府としては2010年度概算要求においては、LNG エン ジンの地上での開発に係る経費のみを計上するとし、ロケット全体の開 発費の計上は見送り本格的な開発着手を先送りするとの方針を示してい る。但し、今後、課題として残っている事項に進展が見られた場合には 予算編成過程において必要な対応を行うとしている。

開発着手先送りに関しては、25日の閣議後の記者会見で野田聖子宇宙 開発担当相が、開発の白紙撤回ではないと述べ、開発推進派への配慮も 見せている。

 http://d.hatena.ne.jp/t-naka/20090825/p1

【090831-15】
文科省/JAXA、2010年度から新型ロケット開発の予算要求方針

8月27日付けのNIKKEI NETは、文部科学省とJAXAが、2010年度から新型 ロケットを開発すると報じている。

惑星探査や災害監視に使う中小型衛星向けで、打上げ費用を30億円に抑 えてH-IIAの1/3にするとしている。ロケットの構成については触れていな いが、この記事を受けた米国のポータルサイトStellite Todayが、全長24m、 直径2.5mの3段式ロケットで、推進薬は全段固体と報じている。

開発費は約200億円で、一部を2010年度予算の概算要求に盛り込むとし ており、2012年度の初打上げを目指し、新たに機動性のあるロケットを保 有して、宇宙産業活性化の呼び水とするとしている。

 http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090827AT2G2600R26082009.html

【090831-16】
JAXAのウェブサイト内の注目記事へのリンク

8/24ISASニュース2009年8月号
8/24JAXAとドイツ航空宇宙センター(DLR)との人工衛星による災害監視に係る研究開発協力の開始について
8/25ISS・きぼうウィークリーニュース第351号
8/25LNGエンジンの燃焼試験結果について
8/26第10回LNG(液化天然ガス)実機型エンジン燃焼試験の結果について
8/26「微小重力環境における高等植物の生活環」の紹介ページを開設しました
8/26「だいち」PALSARによる台湾で発生した水害に関する観測結果について
8/26「平成21年度宇宙航空品質保証シンポジウム」開催について
8/27「だいち」によるギリシャ山火事の緊急観測結果
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