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金環日食の木もれ日キャンペーン
みんなで木もれ日を観察しよう

 いよいよ5月21日には、日本全土で日食を見ることができるというので、各地で大にぎわいですね。とくに太陽の端だけがリングのように残る金環日食帯では、みなさん準備に余念がないでしょう。今回は日本の100万都市のほとんどで金環日食が見えるという絶好のチャンス。頑張って楽しみながら観てくださいね。ただし、金環とはいっても、太陽を裸眼で直接見るのは危険です。必ず「日食メガネ」を使って見てくださいね。KU-MAは、JAXA宇宙教育センターと連携して、太陽を直接見ないで、木もれ日の中で楽しむキャンペーンを展開しています。当日が晴れるといいですね。

1 金環日食の見え方

 いきなり太陽が輪っかに見えるわけではありません。たとえば図1のように移り変わっていくのです。そして、この太陽を隠しているものが、他ならぬ「お月さま」の新月の姿であることを感じることも必要ですね。


(図1)金環日食の見え方

 それから、同じ金環日食でも、太陽と月の見かけの大きさの差が小さい時は日食のリングが細いし(図2-1)、差が大きいとリングが太く(図2-2)、また金環食帯の中心線上ではリングが綺麗な円形なのに対し、中心線からずれている場所ではリングの太さが図2-3のように偏って見えます。今回の場合、大阪・京都・名古屋などはそうですね。

 もう一つ、太陽と月の見かけの大きさがほとんど同じだと、月の山や谷の隙間から洩れる太陽の光が、数珠のように連なって見えます(図2-4)ベーリーの数珠、ベイリーズ・ビーズ)。今回も、金環食の始まりの場所(中国の海南島辺り)や終わりの場所(アメリカ西部)に行けば見られるのではないでしょうか。




2 原理

【地球と太陽と月の関係】

 昼間太陽を見ていて、その前を横切るのは、雲ぐらいですね。たまには鳥も横切るかもしれませんが。ところがその太陽の前を、ちょうどお月さまが横切る時もあるんですね。すると太陽が大きく隠されますね。それが日食です。

 太陽の周りを地球が周り、その地球の周りを月が回っていることは知っていますね。その月や太陽は、地球から見るとどれぐらいの大きさに見えるのでしょうか。まず、太陽の直径は約139万2000 km。月は直径約3476 km。太陽の大きさは月の約400倍ですね。そして地球から太陽までの距離は1億5000万km、地球から月までの距離は38万4400 km。こちらも、太陽と月で地球からの距離に約400倍の違いがあります(図3)。

(図3)地球と月と太陽の大きさと位置の関係

 大きさの比率と距離の比率がちょうど同じぐらいなので、地球から見て、太陽と月はほぼ同じ大きさになり、ちょうど月に太陽が隠れてしまうように見えるというわけですね。太陽系にはいろいろな天体がありますが、太陽からこんなにぴったりとした位置関係にある惑星と衛星は、地球と月だけなのだそうです。私たちはラッキーですね。

【日食はいつ起きるのか】

 さて問題は、地球と月の軌道が傾いていることです。もし傾いていなければ、新月の時には決まって日食が見られるはずなのですが、残念ながらこの二つの軌道は5度ほど傾いているのです。地球から見ると、太陽に方が動いて見えますね。これを「黄道」といいます。月が地球を回る軌道は「白道」ですね。

 黄道と白道は、交わるところが2ヵ所あります(図4)。日食が起きるのは、この交点に太陽と月が重なって見える時です。部分日食を含めれば、こういったチャンスは1年に2回から4回くらい起きているんです。


(図4)地球から見た太陽と月の通り道

【小さい月がなぜ大きい太陽を隠せるのか】

 さきほども言ったように、太陽は地球の100倍くらいの大きさですし、月は地球の4分の1くらいです。ということは太陽は月の400倍も大きいわけです。もし太陽が人間の身長くらい、たとえば160cmくらいだとすると、400分の1ということは、月は4ミリということですから、アリンコぐらいになりますね。アリンコが人間を隠してしまうなんて起きそうもない感じがしますが、実はその月の400倍の太陽は、地球からみると月の400倍遠いところにあるので、一直線上に並ぶと、ちょうど隠れるというわけですね。

【皆既と金環】

 日食のときには、太陽をバックにした月の影が地球の上に映ります。図5をご覧ください。その地表に映った月の影を宇宙ステーション「ミール」に搭乗しているロシアの飛行士が撮ったものです。珍しくも感動的な写真ですね。その影が時間とともに地表を移動していきます。その影のあたりから太陽を見上げると、日食が見えているわけです。


(図5)宇宙ステーション「ミール」の飛行士がとらえた月の影

 地球から見る月の大きさは、月の位置によって微妙に変化する(図6-1)のですが、月が地球にちょっとだけ近い時には、月の方が太陽よりもちょっと大きめになって、太陽が月にすっぽりと包まれる「皆既日食」になるし、月がちょっと遠いと太陽の方が月よりもちょっとだけ大きめに見え、「金環日食」といって、月の周りから太陽が輪っかのようにはみ出しているような日食になります(図7、図8、図9)。5月21日の場合の金環日食は図6-2くらいの中くらいの太さのリングになるようですよ。


(図6−1)太陽と月の見かけの大きさの変化


(図6−2)5月21日におけるリングの太さ


(図7)皆既日食の見える仕組み


(図8)金環日食が見える仕組み


(図9)出展:沼澤茂美「黒い星を追って」(別冊星ナビ)

3 日本と世界における日食

 日本の陸地で金環日食が見られるのは、1987年(昭和62年)以来なんです。でもこの1987年の金環日食は、沖縄で見られただけです。この時は日本全国で太陽が大きく欠ける部分日食が見られて話題になりましたので、年配の方の中には、小さい頃に下敷きなどで欠けた太陽をご覧になった方もおられるでしょうね。今回の金環日食が、地球全体で見られる範囲を示したのが図10です。中国の海南島辺りから始まる5月21日の金環日食帯は、日本列島南部を舐めながら北上して行き、アリューシャン列島の近くで最大になり、東へ向かいながら南下し、北米大陸に入ってテキサス州で終了します。


(図10)2012年5月21日の日食

 日本では、図11のように、九州南部、四国の大部分、紀伊半島から関東地方、そして福島県の一部にかけての広い範囲で観ることができます。東京などの中心線付近では、金環日食が約5分継続します。しかも次に日本で見られる金環日食は2030年6月1日ですから、今回は見逃せませんよ。


(図11)

4 観測方法

 今回の日食を見る際に、みなさんにお願いしておきたいことがあります。肉眼で太陽を見つめることは絶対にしないでください。黒い下敷きも煤の付いたガラスも駄目です。市販の「日食メガネ」や「日食グラス」を使ってください。なぜそんなことを言っているのかを説明します。太陽からくる光には、目に見える可視光線の波長の外側に「紫外線」や「赤外線」と呼ばれる光も含まれています(図12)。太陽観察で厄介なのがこの紫外線と赤外線です。


(図12)いろいろな光(電磁波)

【紫外線】

 まず紫外線は、可視光線よりも波長が短い光です。強烈な紫外線を眼に浴びると、短時間でも眼球の表面の角膜に傷ができて痛みを感じる「雪目」になったり、弱い紫外線でも長い時間にわたって浴び続けると白内障などを引き起こしたりします。ただし、紫外線は角膜よりも内側にある水晶体というレンズで吸収されますから、網膜にダメージを与える可能性は少ないでしょう。

 【赤外線】

 もうひとつの厄介者が赤外線です。赤外線は、可視光線より波長が長い光です。赤外線は「熱線」とも呼ばれていて、たくさん受けると人体にも悪いのです。目に入ってきた光が焦点を結ぶ網膜なんて、皮膚などに比べると非常に弱くできていますから、赤外線を受け過ぎると、やけどみたいなダメージを受ける可能性もありますよ。繰り返しますが、可視光・赤外線・紫外線を有効にブロックしてくれる市販の「日食メガネ」や「日食ガラス」を使ってください。もし自分でメガネやグラスを作る場合は、雑誌や書籍に掲載している方法をよく読んで、丁寧に作ってください。

5木もれ日キャンペーン

 さて、今回の日食の大きな特徴は、北海道から沖縄まで日本全土で見られるということです(図11)。金環日食が見られないところでも、部分的に欠けた太陽が見られます。これは部分日食ですね。月食と違って日食は直接裸眼で見ることができないのですが、金環日食も部分日食もそれなりの楽しみ方があります。木もれ日(図13)を使って楽しむのです。


(図13)美しい木もれ日

 まず、皆さんの家の近所で木もれ日のきれいな場所を見つけましょう。探すコツを図14に書いておきます。そこを、5月21日に日食を観測する場所に決めればいいですね。先回の日食のときにすでに経験している人もいるでしょうが、中には「え? 何で木もれ日かって?」って思う人もいるでしょう。みなさん、木もれ日をしげしげと見たことがありますか?木もれ日は、葉っぱや枝の作る隙間から太陽の光が洩れてくるのですが、それが地上に映っている形を見ると、そのほとんどが丸いのです(図15)。


(図14)木もれ日の綺麗な場所を探すコツ


(図15)木もれ日はなぜ丸い?

【三日月形の太陽を木もれ日で】

 これは考えてみると不思議なことで、葉っぱなどが複雑に絡み合ってできる隙間は、いろいろな形をしているはずですよね。なのに、地上に漏れてきて映っている形は丸いのです。木もれ日は、実は光を発している源である「光源」の形が映っているのです。これはいわゆるピンホールカメラの原理なのですが、ということは、太陽が月に一部隠されて三日月形になっていたら? そうです。地上に落ちる木もれ日は、一斉に三日月形になるということです。

【ピンホールカメラって?】

 それでは、ピンホールカメラの原理に迫ってみましょうね。まずいろいろな形のピンホールを作ってみましょう(図16)。画用紙に、カッターなどを使って、丸や四角や三角、それからハートの形みたいに、自分の好きな形を切り抜いて(図17)、そのいろいろな形に上から光源を当てて、下にできる「木もれ日」みたいなものの形に注目してください(図18)。新しい発見があるよ! (図19)


(図15)いろいろな形のピンホールを作ろう


(図16)穴の大きさは2〜3ミリがいいよ


(図17)太陽や蛍光灯で「木もれ日」を作ろう


(図19)そうか! 光源の形が映ってるんだ!

 三日月形の太陽の木洩れ日というのは、一昨年の皆既日食までは、意外とこれまで撮影されたものが少なかったのですが、2002年に北マリアナ諸島のテニアン島で、現在和歌山大学にいらっしゃる吉住千亜紀さんが見事に撮影していらっしゃいます(図19)。「木もれ日」とか「陽だまり」という日本語の響きは素敵ですね。こんなに粋で情緒たっぷりの楽しみ方をするのもオツなものですね。


(図20)部分日食の木もれ日 2002年6月11日 テニアン島にて :吉住千亜紀先生(和歌山大学)
      PAONET 第1回 イメージ・オブ・ザ・イヤーに輝いた「日食時の木もれ日の写真」

【先回の経験】

 それではここで先回の皆既日食の際の「木漏れ日キャンペーン」への応募作品を少しご紹介しましょう。


木の葉の隙間からの光


いろいろなものの隙からの光


ピンホールを作って


ピンホールで絵を描いておいて


段ボールのピンホール


水に映して


老眼鏡、トイレットペーパーの芯、鏡で反射させて

【木もれ日キャンペーンに応募を】
 現在、子ども・宇宙・未来の会とJAXA宇宙教育センター、では、共同して「日食木もれ日キャンペーン」を展開しています。みなさん、5月21日の前日までにご近所で木もれ日のきれいなところを探しておいて、日食の当日に「木もれ日で見た太陽の姿」を、ぜひ写真にとって送ってくれませんか。木の種類などによっては、きれいな木もれ日になっていないものもありますから、やはり前もって準備をしておくに越したことはありません。詳しくはJAXA宇宙教育センターのホームページをご覧ください。

5 むすび

 次に金環日食が日本で見られるのは、実に2035年のことです。それにしても、昔は太陽が月に隠される日食というのは日が蝕まれるというので、食ヘンに虫という字を使っていましたよね。現在は日が食べられるという字を書くのですね。それはあの頃は「日本食堂」のことだったんだけどなあ。

 考えてみると、1億5000万km彼方の太陽の光が、38万km彼方の月によって邪魔されて、数m頭上の葉っぱの隙間から三日月形になって漏れて映っている姿を撮影するなんて、なんて宇宙的なんでしょう。そんな雄大な宇宙を心におさめながら、木もれ日を楽しんでください。それではみなさんから寄せられる写真を楽しみにしています。5月21日が晴れるといいですね。 では最後にみなさんの参考までに、日本全国各地における5月21日当日の日食の時刻を御紹介しておきましょう。数字は午前の時刻(時:分:秒)です。




改めて観察の時注意する事



太陽の光は非常に強力です。写真のような観察をしてはいけません。

肉眼で直接太陽を見る(数秒でも危険です)
望遠鏡や双眼鏡を使う
色つき下敷きやCDを使う
フィルムの切れ端を使う
すすを付けたガラス板を使う
サングラスやゴーグルを使う
日食グラスを使って望遠鏡や双眼鏡を覗く

ピンホールの工作については、2009年の皆既日食の特集ページをご覧ください。

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