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7月8日「倭と和について」

 山口・防府の毛利博物館に古今集の写本が展示されている。その書き出 しの部分が気になった。「古今倭歌集」と書いてあったのである。まだ文 字を持たなかった私たちの先祖が、自分のことを「わ」と呼んでいたこと は、「わたし」「わたくし」「われ」などの表現に垣間見える。そこで、 中国の王朝と接触を持ち始めたこの列島の人たちが、自分のことを「わ」 という音で表現したことは十分に想像できる。その音をもとにして、かの 国の人たちは「倭」という文字を当てたに違いない。「人」に「委(まか) せる」というこの「倭」という字は、ある意味では蔑称であり、他方こち らから見れば「ヘリくだった表現」だったであろう。

 どこかの時点で、この国の「わ」に「和」を当てた人がいる。しかも 「大いなる和」を。だが、このことは非常に重大で素晴らしい「発明」だ った。その後の展開を見ると、「和」は、この国を表す「音」にとどまら ず、この列島に住む人々の特質を見事に表しているように感じるのである。 「倭」と「和」──毛利博物館でふと感じた違和感は何だったのだろうか。 この疑問を引きずりながら帰りの新幹線の客となった。

 文字のない国に漢字が来た。漢字を使いこなすようになった人びとは、 それを自分たちが読みやすいような、また自分たちのもとからあった言葉 を表わしやすいような工夫を施した。カタカナとひらがなである。ただし そうした新しい文字が自由自在に使いこなされるまでには数百年の歳月が 流れている。それにしても現在では、この漢字とかなとカナのシステムは、 グローバル化した文化を使いこなす実に有力な武器となっていることは疑 いない。古来からあった日本人の柔らかい感性を見事に表現できる文字の 工夫は、漢字がもとになっているとはいえ、日本人らしい「発明」と呼ん でいいものである。

 この国には、外から入ってきた宗教がいろいろある。仏教、キリスト教、 イスラム教などなどさまざまな宗教がさまざまな形で流入してきた。その たびごとに一定の信者を獲得し、それなりに流布し、日本古来の人々の感 じ方に即した姿で捉えられてきた。個人個人としてみれば、それはどれか の宗教を本気で信じている人も多いが、「世間」で見れば、日本は完全な 多神教である。クリスマスには「ジングルベル」に溢れ、年末には除夜の 鐘を聞き、年が明けると神社にお参りする。何のことはない。一般の人々 にとっては、キリスト教や仏教や神道があいまいに混じり合った「多神教 国家」なのである。これも千数百年かかってこの列島の人々がなしとげた もの。

 そして私たちの目の前に、明治以降本格的に殺到した「科学」がある。 富国強兵・殖産興業と結びついて、いわば科学を実用的に活用することに おいて、この列島の人々ほどすぐれた力を発揮した人びとはいなかったに 違いない。これが古来の日本人の心に溶け込んだ科学に成長した時、日本 は世界に発信する大きな立場を獲得するだろう。今はその過渡期にあると 思いたい。

 「和」というのは、こうした外来のいいものを日本人の心で受け取り、 模倣し、やがて自分にぴったりと合った存在に「創造」していくための偉 大な「闘い」だった。「大いなる和」「ダイナミックな和」であった。核 兵器をつくり、環境をピンチに陥れて、壮年期に入ったとされる人類社会 に、日本人の生きざまの中で今や必須となった科学を、自らのカラーで高 く掲げて独特の貢献をする時期になったと思えてならない。

 しかし相変わらず「科学技術立国」「産業化」「軍事化」の声が高まる 一方の政策が目につく。その日本的なものが「いのち」を基盤に据えたも のである予感はあるのだが・・・。そこで、毛利博物館での違和感から発し た想いを、まだ「和」とならない段階で、正直に吐露した次第である。す っきりとしない毎日が続いている。

(的川泰宣)

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