コンテンツ
KU-MAについて
入会案内
リンク
会員向け

KU-MAの
おすすめ


超巨大ブラックホールに迫る
「はるか」が作った3万kmの瞳


自然の謎と
科学のロマン(上)

Newton編集長の実験と工作動くもの浮くものの不思議

Newton編集長の実験と工作─光や電気の不思議─


小惑星探査機「はやぶさ2」の大挑戦 太陽系と生命の起源を探る壮大なミッション


新しい宇宙のひみつQ&A


宇宙人に会いたい!: 天文学者が探る地球外生命のなぞ


宇宙の始まりはどこまで見えたか? 137億年、宇宙の旅

他にもおすすめがあります

YMコラム
横浜・東京間に富士山現れる!

1 ドジと疲れ

 8月に入ってから何だか疲れるなあと思っていた。カレンダーで振り返 ってみると、なるほどと頷ける。1日に宇宙旅行シンポジウムを終えた後、 千葉→青森→東京→御殿場→東京→呉→東京→諏訪という日程だったらし い。おまけにドジで余計な遠回りをするものだからもっと消耗している。

 青森に行く日には、いったん千葉(幕張)に寄って、研修会の講師を務 めてから羽田という予定だった。家を出るのが少し遅れて、新横浜から新 幹線に乗って東京まで行き、そこから海浜幕張という駅まで行くというル ートを辿らないと間に合わないことになったので、わざわざ新横浜まで出 向いて乗り換えた。これで1回だけ東京で乗り換えればいいなと思って、 ホッとして窓の外を何気なく見たら、何と富士山が見えている。6割がた 雲に隠れているが、まぎれもない霊峰である。横浜から東京に向かう間の 右側には、あんな山はない。溜め息をつきながら何度見ても富士山だ。

 独白――何でこんなことになったのか。そうだ、横浜線で読んでいた本 が、吉田秀和さんの『千年の文化、百年の文明』という本だったのがいけ ない。あんな壮大なテーマの本を読んでボーッとした頭で乗り換えたから、 ついいつも乗り換え慣れている名古屋方面の方へ行っちゃったんだ。そう だ、吉田先生が悪い! いやいや吉田先生は悪くない。吉田先生は、まさ か私がこんなせせこましい時に自分の本を読むとは思っていないわけだか ら、やはりそんな本をこんな時に読んでいた自分が悪い! いやいや読ん でいたことは悪くない。どんな本を読んでいても、乗換ぐらいはきちんと 出来るのが大人というものではないか。悪いのは血液型か?

 都合の悪いことに、乗ったのが「のぞみ」だ。名古屋までノンストップ だ。そこでムクムクとけしからん考えが頭を擡げてきた。「これじゃあ、 幕張の講演会はあまりに大幅遅刻で、先方には悪いがキャンセルにならざ るを得ない。名古屋でUターンしてそのまま羽田から青森へ行くか、ある いは名古屋から直接青森へ飛ぶかのどちらかになるかな。そうだ、今日の 青森はねぶた祭りだ」などと妄想をたくましくしながら、新幹線の中から 幕張の研修会の担当者へ電話。

 しかし事態は一転して思わぬ方向へ。私のいかにも申し訳なさそうな声 の事情説明を聞いた担当者は、明るい声で「了解しました。こちらは合宿 して研修していますので、プログラムは柔軟に変更できます。名古屋にお 着きになったら、何時の新幹線で東京に向かわれるか、お電話を頂戴でき れば。」トホホ。ねぶたが遠い彼方へ去った一瞬だった。無論、幕張での 講演を終えて、大急ぎで羽田へ向かい、最終便のJALに飛び乗って青森空 港に降り立ったのは、その日の深夜のことであった。近くの飲み屋で寂し い夕食をつまみながらテレビに映っているビデオを眺めた。ちょうどその 日は「子どもねぶた」だったらしい。

 諏訪出張も参った。講演が済んだ後で懇親会があるというので、帰りの 電車をフローティングにしておいたのが祟った。上諏訪駅で「スーパーあ ずさ」の指定席券を買おうとしたら、2時間後まで満席なのである。「こ こは信濃。駅前のソバ屋で信州ソバでも食べながら待つか」との思いもか すめたが、駅員さんの「次のスーパーあずさは、いつもなら自由席でも空 席はあるのですがね」の言葉に、ついふらふらと従ったのが運のツキ。3 両もある自由席はすべて満席。ゴトゴトと八王子までの揺れの激しいデッ キで立ちっぱなしになってしまった。駅員さんが「いつもなら」の部分を もう少しアクセントをつけて発音してくれていれば、との思いが、苦々し くよみがえる1時間40分となった。これも人の言葉を善意に受けとめよ うとするB型のせいか?

 みなさん、乗り換えは慎重に。そしてこれからはお盆の季節。帰りの切 符は確保しておきましょう。それにしても過去の記憶と教訓は薄れて行く ことが必然。一夜明けた今は、元気いっぱい。さあ今度はどこに行くのか な。

2 アメリカの有人宇宙計画

 そう言えば、立ちっぱなしの諏訪からの帰りに、アメリカの新聞をネッ トで読んでいたら、シャトル引退後のアメリカの有人飛行の計画について の記事が出ていた。オバマ大統領が、ブッシュ時代に作られた有人宇宙計 画の見直しを行っていることは聞いていたので、思わず目が行った。

 隔日と言うハイペースで開かれた委員会には864個もの提案が寄せら れたらしい。それを最終的には3つにしぼる方向なのだが、これまでの議 論で7つまでに絞られてきているという。オバマは宇宙予算を削減するだ ろう。残っている7つのうち、その削減を見込んだものが3つある。

 そのうちの一つは、再び人間を月へ送るというブッシュ時代の計画を引 き継ぐ形。ただし2020年までにやりとげるという目標を先へ送るとい うもの。二つめは、現在2015年まで運用する予定の国際宇宙ステーシ ョンを少なくとも2020年まで運用しようというもの。当然その結果、 月探査が先送りされるというわけである。三つめは、アポロ以来絶えてい た地球低軌道以遠への人間の飛行を実現させようというもの。

 あれ?と思って読んだのは、この三つめのオプションである。これは、 国際宇宙ステーションを予定通り2015年に運用終了し、NASAがこれま で取り組んできた「アレースI」ロケットの開発を中止し、乏しい予算を 大型の「アレースV」ロケットに集中させるというもの。アレースVで月を めざすのだが、ただし月面着陸は先送りとされている。

 さて、生き残っている7つの案のうち、残りの4つは予算の削減を前提 としていない。パネルの座長を務めているノーマン・オーガスティン氏 (ロッキード・マーティン)は、以前「予算の制約ですぐに駄目になるよ うな計画は進言しない」と断言していたから、見通しとしては上記の3つ が有力候補となるだろうが、他の4つの中にも魅力的なものが含まれては いる。たとえば地球近傍の小惑星や火星の衛星など深宇宙を広く探査しよ うというもの、恒久的な月面基地の建設に着手しようというもの、アレー スIもアレースVもやめて現在のシャトル技術をもっと直接に応用した輸送 機を建造して2010年にシャトルが引退しても空白期間をなくそうとい うもの、そして最後のオプションは、火星を直接目指すべきでアメリカの 宇宙活動の努力をそこに集中しようというもの。

 8月12日に開かれる会議で、コストとスケジュールの両面が仔細に検 討されて一応の結論が出されるだろうが、いずれも「ターゲットとデッド ラインを明確にしない計画は必ず中途半端になる」というこれまでのNASA の経験的教訓が、生かされることになるだろう。それにしても日本の「懇 談会」とか「委員会」の結論の曖昧なこと、これを今後はどうにかして行 きたいものですね。

(的川泰宣)

<<「若田光一さんが帰って来た」TOP「NASAの有人月ミッション2020年は無理」>>
TOPKU-MAについて入会案内リンク会員向け

このサイトの内容の無断転載・複製を禁止します