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「NASAの有人月ミッション2020年は無理」

 現在NASAでは、オバマ政権のもとでブッシュ時代に策定された有人飛行 計画の全面的な見直し作業が行われています。この見直し作業を担当して いるのは、ロッキード・マーティンの元社長ノーマン・オーガスティンを 座長とする「オーガスティン委員会」と呼ばれる委員会です。アメリカ女 性として初の飛行士となったサリー・ライドや宇宙政策の権威ジョン・ロ グズドンなど10人の委員によって構成されています。もともとは現在のオ バマ大統領が指示した予算の範囲内で行える有人飛行計画を勧告する任務 を持っていたのですが、凄まじいスケジュールで会合を重ねた結果、結局 は現在予定されている2020年までのNASA予算案(1年に合計180億ドル) では、2020年までISSを運用するぐらいが精いっぱいで、月や火星など地 球低軌道よりも遠くに人間を送ることなど、少なくともあと20年は無理だ という結論に達しました。

 8月6日の時点で3000個もの提案の中から生き残っていたのは、7つの プランです。そのうち3つは2010〜2020年を現在の予算案のままで通した 場合の策、あとの4つは金額は定められてはいないものの、現在の予算案 よりも増えた場合の案でした。NASAが2020年までに有人宇宙飛行のために 与えられている予算はほぼ800億ドルで、アレースとオライオンが選ばれ た時に必要と見込まれた予算よりも280億ドルも下回っています。まずは 参考までにこの7つのプランについて紹介しておきましょう。

1.最もシンプルな案は、従来のプランそのままです。つまり、2010年に スペースシャトルの使用を中止し、新しい「アレースT」ロケットと「オ ライオン」宇宙船という組み合わせの有人宇宙輸送システムに切り替え、 2015年に現在の国際宇宙ステーション(ISS)を太平洋に破棄することで す。ただしアレースTのデビューは2016年目標なので、それまではロシア のソユーズを使う。人間を月面に着陸させるために必要なもう一つの「ア レースX」ロケットのための予算は、1年ごとに様子を見ながら捻出して 行くという考え方です。基礎知識として付け加えれば、現在NASAが「コン ステレーション計画」と呼んでいるものは、スペースシャトルの後継機と して、使い捨ての「アレースT」「アレースX」ロケット、月や火星へ行 く「オライオン」宇宙船、月面に着陸する「アルタイル」着陸船から構成 される月・火星への有人飛行計画です。

2.現在の予算案の範囲内に収める他の案は、スペースシャトルの使用を 2010年に中止するが、ISSの使用は2020年まで延長し、その代りアレースT をやめて、デルタW、ファルコン9、トーラス2などに替えるというもの です。オライオンはそのままです。

3.現在の予算案の範囲内に収める3つ目の案は、シャトルを2010年に中 止し、ISSを2015年に廃棄し、アレースTは中止。ISSへの飛行をソユーズ に頼りながら、現在の案よりも小さな2種の「新アレースX」ロケットを 使って、月周回軌道やラグランジュ点や地球近傍小惑星に人間を送るとい うものです。この場合は月面への着陸を諦めるわけです。

4. 予算を増やす案の一つは、シャトル使用を2015年まで延長し、現在 案のアレースXよりもシャトルの技術を取り込んだ大型輸送システムに切 れ目なく続けるというプラン。この新システムは月面基地建設ミッション に使うつもりで、この場合は、シャトル引退後のISSへの飛行を商業ロケ ットまたはソユーズに頼りながら、2020年までISSを運用するというもの です。この案の意図は明確ですね。ソユーズに頼りたくないのです。

5.予算オーバーの2つ目と3つ目の案は、シャトルは予定通り2010年に引 退、ISSは2020年まで運用、アレースはTもXも中止して地球低軌道へは ソユーズまたは商業ロケットで行く。低軌道より遠い所へは、NASAの技術 蓄積を最大限活用した新しい大型ロケットまたはアトラスXの改良型など を使う。これらによる行き先によって2つ目と3つ目の案が分かれています。 月面次いで火星というのが2つ目の案、月周回軌道・ラグランジュ点・近 傍小惑星というのが3つ目の案です。

6.予算オーバーの4つ目の案は、月を省略して火星有人飛行を直接めざ すものです。いわゆる“Mars Direct”ですね。アレースXをたくさん使 い、宇宙給油を実行し、月飛行は火星へのハードウェアのテスト用に使う という「勇敢な」ものですね。

 そしてこの数週間、猛烈な勢いで会合を開いていましたが、実質的な結 論は冒頭に述べたようなものになったわけです。オーガスティン委員会は、 8月12日の記者会見で、「2030年までに地球低軌道を離れて太陽系のどこ かへ行くためには、現在のNASAの年間予算を少なくとも30億ドル増加させ なければならない」としています。

 ところが、オーガスティン委員会が8月14日にホワイトハウスに報告し た進言は、奇妙なことにオプションのどれを選んだというものではなく、 以下の4つの項目から成っているのです。

・予算の許す限りコンステレーション計画を推し進める。

・ISSの運用を2020年まで続け、そのISSへの輸送は商業ロケットで行う。
 ただし、将来の探査用ロケットの開発は続ける。

・スペースシャトルの飛行を2015年まで続ける。ただしシャトル技術を活用して
 月へ行くための輸送システムには取り組む。

・太陽系を探査するための大型ロケットを新たに開発する。

 オーガスティン委員会のメンバーの中でも利害関係が対立していますか ら、明確にどのオプションを選ぶということは不可能だろうとは思ってい ましたが、結局のところは、「金を出してよ。そうしないとどうしようも ないよ」というやけくそ気味の進言になったように、私には見えます。後 はお決まりの大企業と政府との裏の取引が塹壕を使って展開されていくの でしょう。すっきりとした勧告を期待していた身には、ちょっとコタエル 展開になりました。

 いずれにしても、ブッシュの残した厳しいプログラムのツケをどうする か、オバマ大統領としては、こんな居直った勧告をされても困るだろうと いうのが素朴な感想ですね。こんなにフラフラした他国の戦略に左右され ないよう、日本の宇宙戦略はあくまで独自の哲学に貫かれたものを確立す べきです。国際協力はそれからの柔軟戦術として出るはずのものでしょう から。日本で宇宙戦略本部のもとで始まったばかりの「有人飛行を視野に 入れた月探査懇談会」の行方に注目しましょう。

(的川泰宣)

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