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「韓国の衛星、軌道に乗らず失敗」

韓国は、さる8月25日午後5時(現地時間)、ソウルの南485 km、全羅南道 にある羅老(ナロ)宇宙センター(図1)から、100 kgの衛星「羅老1号」 を搭載したKSLV-1(羅老1)ロケットを南に向けて打ち上げました(図2)。 7回の延期を経た、待ちに待った打上げでした。ロシア製の1段目エンジン RD-191(ケロシン/液体酸素)は順調に燃焼、10秒後に高度約900 mに達し たあたりで姿勢を変える「キックターン」を実施、沖縄近海の上空を飛んで、 ノーズフェアリングを分離(215秒、高度177 km、韓国製)しました。しか し二つに割れたフェアリングのうちの一つがきちんとロケットから離れ切ら ず、以後ロケットはフェアリングをぶら下げたまま飛翔を続行した模様です。 そのまま1段目と2段目の分離が232秒、高度196 kmで起き、韓国製の2段目モ ーター(固体燃料)に点火(395秒、303 km)されました。ここまでは恐らく すべてのシーケンスがタイマーでコントロールされていたのでしょう。そし て分離した1段目はフィリピン近海に落下しました。


図1 羅老宇宙センター


図2 KSLV-1

次の決定的なイベントは、発射後540秒、高度約306 kmにおける2段目からの 衛星分離だったのですが、これがうまく行かなかった模様で、やっと高度約 342 kmになって衛星分離がされたと発表されています。この辺の衛星軌道投 入のアルゴリズムは発表されていないので不明ですが、慣性誘導でも電波誘 導でも、速度がきちんと増加していかないと衛星分離のタイミングは遅れて 行くわけです。フェアリングがずっとぶら下がっていたので速度が上がらず、 結局分離に許された時間のリミットまで飛んで、衛星が切り離されたのでは ないでしょうか。その時は衛星になるための速度は達成されていなかったの でしょう。衛星は速度不足のまま飛翔経路の頂点に達した後、海に向かって 落下を開始、途中で濃い大気によって燃え尽きたものと思われます。もちろ ん2段目もフェアリングもろとも海に落ちたか、燃え尽きたでしょう。

当初の当局の発表は「目標の軌道に投入することには失敗した」というもの だったのですが、「では目標ではない軌道には投入されたのか」と言えば、 どうもマスコミの突っ込みもいま一つで、そこの肝腎のところは情報がなか ったのですね。因みに、目標としていた軌道は、近地点300 km、遠地点1500 kmです。ただし、きちんと追跡していれば、「ともかく衛星軌道には投入し た」と発表するでしょうし、この原稿を書き始めた、打上げから15時間の時点 で「衛星の捕捉」について発表がなかったので、その時には、衛星は「地球周 回軌道に乗らなかった」か「軌道には乗ったが行方不明になった」か、どちら かだろうと思っていました。もし「軌道には乗ったが行方不明」というのであ れば、そのうちアメリカのNORAD(北米防空司令部)のレーダー網が捕まえて くれるだろうと考えていた矢先に、ラジオ・オーストラリアのニュースから、 上記のフェアリング分離失敗のニュースが飛び込んできたというわけです。 「羅老1号」スピン衛星で、独自の推進装置を持っていないので、自分で軌 道を修正できないことは分かっていましたが、速度がもともと衛星になるに は不十分だったのでは、まあ話にならなかったわけですね。

それにしても、フェアリングの分離が、なぜロケットに搭載した2台のカメ ラ、あるいはテレメータの信号によって確認されなかったのか、不思議です ね。当局から発表された速報では、「ノーズフェアリングは無事分離された」 と言っていたしね。フェアリングは韓国製と聞いていますし、今年パリで会 った韓国の友人は、「フェアリングは何度もテストを繰り返した」と言って いましたけど(図3)。


図3

これまですでに10個の衛星を外国のロケットで外国の基地から打ち上げてい る韓国の技術者たちは、さぞかし歯ぎしりをしているでしょう。心中お察し いたします。もし軌道に入ってさえいれば、韓国は10番目の衛星打上げ国に なっていたんですが……(図4)。先行した9ヵ国を順番に言いましょうか。 ソ連でしょう、アメリカでしょう、フランスでしょう、日本でしょう、そ れに、中国、イギリス、インド、イスラエル、そして今年2月にイランが 「サフィール2」というロケットで実験用通信衛星を軌道に乗せて仲間に加 わりました。


図4

今回の打上げとしては現在のところこれ以上の情報がないので、いい機会で すから周辺情報を整理しておきましょう。韓国は、さる8月19日(水)午後 5時(ソウル時間)に、「羅老1号」を打ち上げる予定だった(図5)のです が、1段目の燃料タンクの内圧が異常に低下し、ヘリウムガスで作動する弁が うまく働かなくなるという不具合が生じたため、打上げ予定時刻の8分(正 確には7分56秒)前に秒読みを中止し発射を延期しました。そのため1時間前 に充填を終えたばかりの燃料(ケロシン)と酸化剤をタンクから抜き始めま した。


図5

1段目を製作したのはロシアなので、韓国の技術者が共同で原因の究明に当 たりました。とは言っても、この場合実質上は、ロシア側が主導権を握って いたでしょう。目に見えるようです。その結果、タンクの圧力自体は正常 だったのですが、測定するセンサーないしソフトウェアが「圧力が規定値以 下」という報告をし、自動打上げシーケンスが打上げ中止を指示したという 流れが判明しました。韓国の技術者たちのボヤキが聞こえてくるような気が しますね。その誤謬を修復してロケットを再び組立棟に戻し(図6)、再注 入して打上げ作業に再び入ったわけです。その前日の火曜日に全体を通して のリハーサルを8時間かけてやったのですが、このときは推進剤を注入して いなかったために、このバルブのような騒ぎは起きなかったのだと思われま す。


図6

KSLV-1ロケットは、全長33 m、直径2.9 m、全備重量140トンで、ロシアの クルニーチェフ宇宙研究生産センターが製作した液体燃料の1段目は170ト ンの推力を出します。クルニーチェフは、現在世界をまたにかけて商業打上 げを進めている「アンガラ・ロケット」のハードウェアを製作している企業 です。また衛星と結合している2段目は韓国製で固体推進剤を用いており、 推力8トンです。また韓国先進科学技術大学(KAIST:Korean Advanced Institute of Science and Technology)が製作した衛星「羅老1号」( 1000万米ドル)には、STSAT2というマイクロ波の電波計測器が搭載されて おり、地球大気中の放射線エネルギーを計測する予定でした(図7,8)。 もう一つ、地上局が衛星を精確に追跡できるようにレーザー反射器も取り付 けられています。


図7 羅老1号


図8 羅老1号

さて、打上げに責任を持っている韓国航空宇宙研究院(KARI:Korean Aerospace Research Institute)は、現在ロシアのクルニーチェフの技術 者たちを交えて、懸命に今回のデータを解析中でしょう。もともとは、今 回の打上げが終わったら、2010年4月に1機、2011年にもう1機の打上げを予 定していました。韓国は、KSLV-1の開発には4億米ドル強をかけており、韓 国としては、2018年までにすべてロケットを国産で作るようになり、2025 年に月へ探査機を送りたいとの意向を述べています。また韓国は、昨年4月 に韓国女性(イ・ソヨンさん)をロシアのソユーズロケットに乗せて国際 宇宙ステーションに送り、11日間滞在させています(図9)。

図9

(的川泰宣)

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