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YMコラム
「インドのチャンドラヤーン・ミッションの終焉」

 沖縄の那覇で宇宙教育指導者セミナーをしてきました。宇宙教育に共鳴 する人たちに、現在日本で展開している宇宙教育の考え方を聞いてもらい、 身につけるべき基本となる事柄を入門的にお話しするセミナーです。全国 どこでやっても、非常に熱心な人たちが大勢駆けつけてくれます。今回集 まったのは40人ぐらい。中には高齢の方もいて、1日中受講生になりきる ことはとても辛抱が要ると思われますが、一生懸命付き合っていただきま した。場合によっては講師よりも経験豊かな人もいるに違いないのですが、 まあ初期条件を整えるためにはある程度我慢していただいているわけです。

 その足で鹿児島へ渡り、薩摩川内市の外れにある小規模な小学校でお話 をしてきました。学年ごとに手を挙げてもらうと、1学年が3人だったりし てびっくりですが、私の話を聞く態度ときたら、もうとても立派で、質問 ハキハキと飛び出してきました。塾に行っている子などはいないそうで、 純朴で礼儀正しく人懐っこい、素敵な子どもたちでした。子どもの様子も 親の様子も、日本全国にわたり地域によってずいぶん違いがあります。 「宇宙の学校」の持ち方についても、一層柔軟な対応が求められることも 痛感しています。体はもちろんですが、頭をもっともっと使わなくてはい けませんね。

   さて、インドの月探査機チャンドラヤーン(図1)との交信が突如途絶 えたというニュースはすでにお聞きになったと思うが、どうやらそれには 熱の問題が深く関わっていたようである。


図1

 さる5月に、チャンドラヤーンの軌道高度を100 kmから200 kmに引き上 げるというISRO(インド宇宙研究機構)の発表を耳にした時、いくぶん 「あれ?」と思った人もいたと思われる。私もその一人である。ISROの説 明によれば、それは「探査機軌道の擾乱や月の重力の変動をもっと調査し、 同時に月の表面をもっと広い視野で観測する必要が出てきたから」という ことだった。「今更何を言っているのだろう?」というのが素朴な感想だ ったのだが、実は月周辺の温度の計算を間違えていたらしい。そしてそれ が探査機の熱制御に思わぬ変調を来して、今回の思わぬ交信断絶につなが った。

 ISROのミッション関係者は、月面の上100 kmあたりの温度を摂氏75度く らいと考えていたのだが、実際はもっと高温で、機器の変調を招いたため に、高度を200 kmまで上げざるを得なかったというのが真相だった。

 ISROがこのたび明らかにしたところによれば、その機器の変調はすでに 昨年の11月25日に始まっていて、ペイロードのいくつかをスウィッチ・オ フせざるを得ない事態となっていた。打上げに先立って行われていたバン ガロアのISRO衛星センターにおける熱真空試験(図2)にも深刻に疑いの 目が向けられていたのである。


図2

 今年になってちょっと状況が改善されかけたが、4月26日に主センサー が、次いで5月の第2週にバックアップのセンサーが故障した。二つのスタ ーセンサー(図3)が、思わぬ高温のために不具合を起こし、探査機の姿 勢制御ができなくなるに及んで、ISROのチームは急遽ジャイロを使って暫 くは巧みにチャンドラヤーンの姿勢を制御していたが、その付け焼刃も長 くは続かず、8月30日、ついにギヴアップ。96%の科学目的を達成した (と言われている)チャンドラヤーンは、そのミッションを閉じたのであ る。


図3


図3

 それにしても、スターセンサーの故障を抱えながら、チャンドラヤーン は、7月22日の皆既日食の際に地球に映じた月の影(図4)を始めとする 素晴らしい画像を送っていたし、8月21日には月の北極の氷を探る仕事を NASAのLRO(ルナー・リコネイサンス・オービター)と一緒に飛びながら 遂行した。見事な切りまわしであった。そのチャンドラヤーンと地上局と の会話が突如として途切れたのは、8月29日の午前1時半のことだった。


図4

 貴重な経験であったろう。2013年に打ち上げられるチャンドラヤーン2 号では、摂氏100度に耐える熱設計を行うことが、すでにエンジニアによ って語られている。インド、アメリカ、イギリス、ドイツ、スウェーデン、 ブルガリアの各国によって製作された11個のペイロードの中には、十分な 成果を残せなかったものもあるだろうが、その成果は、これからの懸命の 解析によって徐々に明らかにされていくだろう。とりあえず来月、韓国の 大田市(Daejeong)で開催される国際宇宙会議(IAC:International Astronautical Congress)でどの程度の発表がなされるか、「かぐや」や 中国の「嫦娥」、アメリカのLROなどの発表とともに楽しみにしていたい。

(YM)

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