コンテンツ
KU-MAについて
入会案内
リンク
会員向け

KU-MAの
おすすめ


超巨大ブラックホールに迫る
「はるか」が作った3万kmの瞳


自然の謎と
科学のロマン(上)

Newton編集長の実験と工作動くもの浮くものの不思議

Newton編集長の実験と工作─光や電気の不思議─


小惑星探査機「はやぶさ2」の大挑戦 太陽系と生命の起源を探る壮大なミッション


新しい宇宙のひみつQ&A


宇宙人に会いたい!: 天文学者が探る地球外生命のなぞ


宇宙の始まりはどこまで見えたか? 137億年、宇宙の旅

他にもおすすめがあります

YMコラム
HTVの快挙
 NHKの「クローズアップ現代(クロ現)」のスタジオを若田光一飛行士 と一緒に訪ねました。テーマはHTVです。視聴率の高い番組なのでごらん になった人も多いでしょう。今回は、あくまで若田飛行士が主体の番組で、 私は介添えです。彼に率直な経験を語ってもらい、私がそれに社会的意義 等をコメントとして付け加えるかたちで進行しました。いつも「クロ現」 を取り仕切る国谷裕子さんは中国の建国記念日取材のためあちらへ(残念)。 代役として森本健成アナウンサーがお付き合いくださいました。

 若田さんの生々しい話がとても魅力的でした。それは折に触れて思い出 すことにして、HTVについて、「クロ現」では語りきっていないことも含 め、いくつかのことを書きましょう。

1 日本の宇宙開発にとって、今回のHTVの成功は、どのような意味があるか?

 マスコミのとりあげ方の影響もあって、HTVは突如現れたヒーローのよ うな感じで受け止めた人も多かったのですが、ローマは一日にしてならず ──1955年に発射されたペンシル・ロケット以来、技術を蓄積しながら一 つ一つ宇宙技術の階段を駆け上がってきた日本が、また一つ新たな階段を 登ったということです。

 宇宙開発は宇宙空間での活動の自在性の幅をひろげることで成長してい くものでしょうが、かつて宇宙科学、地球環境などの生活に直結する分野 において世界的な業績をあげてきた日本が、世界の国々の荷物を宇宙輸送 するという世界の一級の国としての国際的貢献をできる分野が、また一つ 出現したということです。そしてこれからもどんどん貢献する見通しを与 えたものです。何しろシャトルが引退したら、大きな荷物をステーション へ運べるのは世界中でHTVしか存在していないのですから。

 このたびの快挙は、技術的には、軌道投入や衛星制御などの基本的な技 術の集積に加え、ドッキング方式は異なるが、「おりひめ・ひこぼし」 (1997)のランデブー・ドッキングの経験や「きぼう」の経験などを加え て、これまでの技術の集大成として実現したわけです。決して偶然とか思 いつきのやっつけ仕事で遂行したものではありません。HTVのランデブー の最中にスラスターが過熱状態になるというピンチな事態に、フライトデ ィレクターを軸に冷静に対処できたのも、「おりひめ・ひこぼし」の経験 が全面的に生かされたといっていいでしょう。

2 HTVはランデブー飛行によるドッキングも素晴らしいものだったが、
宇宙船としての素晴らしさとして、どのようなことが挙げられるか?

 今回HTVが無事ドッキングした時、すでに地球に帰還していた若田飛行 士の自宅に、国際宇宙ステーションにいる飛行士たちから、弾んだ調子で 電話がかかってきたそうです──「コーイチ、HTVが着いたよ。金色にき らきら輝いて素晴らしくきれいな宇宙船だね」と。そして「寿司はどこに 隠してあるんだい? いくら探しても見つからないんだけど」と向こうが 言うので、若田飛行士は「ごめんごめん、積むのを忘れちゃったんだ」と 切り返したそうです。気心の知れた仲間同士ですね。

 さて1気圧という圧力を加えてある宇宙船を運ぶのは初めてではありま せん。「きぼう」で経験済みですね。植物など実験のための生き物を運ぶ ためには、宇宙船を与圧して運ぶことが必要です。今回運んだ植物実験装 置は、まもなくソユーズで飛ぶ野口聡一飛行士が行う実験だったようです。 そして1気圧のまま運べば、それは、ドッキングしてからステーションの 飛行士が、面倒な予備作業なしにすぐにその宇宙船に入り込んで作業にか かるためにも有効です。

 ただし、この1気圧が意外と厄介者で、高圧の容器よりもかえってやや こしいのです。たとえば地上でテストをしているとき、高圧ならば内部の ガスが漏れていることはすぐに分かりますが、1気圧だと、外も1気圧な ので容易には分からないとかいった事態となるのです。

 「きぼう」もHTVも、空気は入っていますが、酸素発生装置とかベンテ ィレーションは付けてありません。ドッキングしてからアメリカのものを 装備してもらうわけですが、でもそれをつけるのは日本の技術からすれば それほど難しいことではありません。とにかく、そういった一連の装置を つければ、そのまま人間が生活できる環境を提供できるという点で、HTV は素晴らしいわけです。日本の有人宇宙活動は、HTVの完成によって、少 なくとも宇宙で生活するという意味では、すぐそこまで来ていると言えま すね。

3 日本の将来の有人宇宙船に期待する

 ご存知の通り、ロシア(旧ソ連)とアメリカはすでに1960年代から有人 宇宙活動に乗り出しました。中国も最近船出しました。インドも着々と準 備を進めていると言われています。HTVという有人宇宙船の一歩手前のも のの運用が始まった以上、日本もHTVの再突入・回収技術を一日も早く完 成させて、一挙に長い間の空白を埋めたいものですね。

 そうした再突入and/or回収につながる技術は、「ひてん」(1990)、 OREX(りゅうせい)(1994)、EXPRESS(1995)、「ユーザーズ」(2003)、 そして来年に地球帰還を控えている「はやぶさ」その他で経験を積んでは 来ています。

 これまで日本では有人宇宙活動についての議論はタブーになっているよ うなところがありました。その原因は、やはり有人は膨大な金がかかると いう先入観(あるいは神話)があるからでしょう。が、無人技術の先端的 な蓄積が日本にはあります。はっきりと戦略的に有人という目標を設定す れば、そうしたこれまでの蓄積を最大限活用して安上がりに日本独自の有 人宇宙をめざす道が開けてくると私は信じています。

 ただし、「安上がり」といっても、これまでと同じ総予算で有人を始め れば、これまでせっかく世界に伍する水準の活動を築いてきた科学や実用 方面の成果まで食いつぶされ、日本の宇宙開発は根底から崩れ去る危険性 があります。国は、宇宙を「一つの活動分野」ということでなく、「国家 の未来への投資」として位置づけ、有人独自の予算を加えなければならな いでしょう。

   これまで科学、ロケット技術、実利用、このたびの輸送船を作り上げて きた日本の技術者・科学者たちの情熱と能力を、世界に向かって開花させ るための方策を、国はぜひ講じて欲しいと思います。繰り返しますが、多 くなくてもいいから有人独自の予算措置を講じなければ、議論が不毛にな ることは重々心得て欲しい。それこそが真に「国家戦略」と言えるもので しょう。

   なお、「和」のつづきは次回ということでご容赦ください。

YM

<<「漢字と宇宙のコラボに参加して」TOP「「和」の系譜(1)日本の古代文字の話挙」>>
TOPKU-MAについて入会案内リンク会員向け

このサイトの内容の無断転載・複製を禁止します