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11月11日「葉脈といのち――ある女の子との会話」

 子どもたちと一緒に楽しむプログラムに、「葉脈標本できれいなしおり をつくる」というものがある。

 まず葉を水洗いして汚れをとり、アルカリ水溶液(水酸化ナトリウムと か炭酸ナトリウムの水溶液)で煮て、葉肉をやわらかくする。その上で、 葉をじっくりと水洗いし、歯ブラシや筆などを使って葉脈から葉肉を根気 よく取り除く。さらに水洗いしたり、場合によっては漂白剤で白くしたり すると、うっとりするように美しい葉脈標本ができあがる。

 アルカリ水溶液を扱う部分は、子どもだけでやらせない方がいいだろう が、葉脈標本ができあがると、子どもたちは溜め息をつくほど感動する。 これに色をつけるなり、思い思いの文字や模様を描いて、ラミネート加工 すれば、しおりが完成する。

 よく池に沈んでいる木の葉が葉脈だけになっているのを見かけることが ある。あるいは葉脈だけが残っている葉っぱの化石なども記憶に残ってい る人がいるに違いない。これは葉脈が他の部分に比べて抜群に硬いからだ ろう。だから葉脈標本を手に入れるには、時間がいっぱいある時ならば、 水につけておいて葉が腐るのをゆっくりと待っていればいい。でも子ども たちと遊ぶ時は、そうゆったりともしていられないので、アルカリと熱を 用いて葉の弱い部分を痛めつけて、葉脈以外の部分を軟化させて取り除い てやるわけである。

 先日、子どもたちと一緒に重曹(ふくらし粉)を使って葉脈標本をつく ってみた。重曹をフライパンで熱して炭酸ナトリウムを作り、その水溶液 で葉っぱを処理した。子どもたちのドキドキしている顔を見ているのは、 楽しいものである。クチナシの葉を使った。真っ白な葉脈を手にした時の 喜びの表情は、まさに天にも昇るような感じであった。

 しばらくして、ある女の子が言った――「どうして葉脈だけが残るの?」 私の予想では、その会話はすぐ終わるはずだった。私の答え――「葉脈は、 葉の他の部分と比べると硬くなっているのかな?」

 ところが、彼女は「なるほど」と言ってくれなかったのである。「葉脈 だけがなぜ硬いの?」そして「だいたい葉脈って何のためにあるの?」と 来た。

 私がハッとしたのはその時である。葉脈の断面を拡大してみると、その 内部には栄養分を運ぶ師管と水を運ぶ道管が通っているのが分かる。言う までもなく、水は根が吸い上げるし、栄養分は葉で作られる。それを運ぶ 葉脈は、植物が生きて行くための幹線道路である。だからこの幹線道路を 守りきるために葉脈は丈夫な繊維が通っていて、他の部分が少々損傷を受 けても大丈夫なように硬くなっている。まさに「生命線」なのである。

 私は、女の子の顔を見つめながら、そして私自身の軽薄さを戒めるよう に、慎重に言葉を選びながら答えた――「この葉脈は、クチナシが生きて 行くための栄養分や水分を運んで行く大事な大事な管なんだろうねえ。だ から、この管だけはどんなことがあっても守ろうとして、つまりクチナシ の“いのち”を守ろうとして、最期まで葉脈だけは負けなかったのかなあ。」

 女の子が涙ぐんだ――「何だか可哀そうなことをしちゃったなあ……。」

YM

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