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YMコラム
11月18日「月に大量の水を発見――アメリカの探査機LCROSS」

 月の南極に近いところに、大きなクレーターがいくつかあります。鋭く 険しい外壁に囲まれたその内部は、太陽が真横からしか照りつけることが ないため、もう数十億年もの間、闇に包まれたままになっていました。そ の一つに、イタリアのジェスイット派の僧侶にして哲学者ニッコロ・カベ オ(1586-1650)に因んで命名された直径約100 kmの大きなクレーター 「カベウス」(南緯85度、西経36度)があります(図1)。

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 2009年10月9日のこと、数十億年の静寂を破って、この「カベウス」ク レーターに、アメリカ航空宇宙局(NASA)のロケット「セント―ル」が打 ち込まれました(図2)。

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 衝突時のスピードは時速9000 km。セント―ルの重さは2200 kgもありま す。クレーターの底から、ガスと細かいダストの一団と、カーテン状態の 重い破片の一群が、豪快に飛散しました。数十億年もの極寒の沈黙から解 き放たれた荘厳な乱舞でした(図3)。

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 この衝突の瞬間を38万km離れた地球上の名だたる天文台や多くのアマチ ュア天文家たちの望遠鏡が緊張のうちに待ち構えていました。事前の計算 によると、その舞い上がるプルームは月面から10 kmくらいの高さに達す るだろうと言われていたからです。しかし実際には1.6 kmあたりに達した だけでした。地球上からの観測の網には一切かからなかったようです。

 でもそのセント―ルの衝突の4分後に同じターゲットに激突した観測機 LCROSSが、セント―ル衝突の際の飛散物を、9機のカメラと分光計を使っ て落下しながら観測していました。そして大量の水や水蒸気を見つけたの です。セント―ルの衝突によってできた穴は直径20 mほどですが、そこか ら美しく飛散したプルームは60〜80 mもの広がりを見せ、そのプルームの 中に、LCROSS搭載の近赤外線の分光計が水の氷と水蒸気を、また紫外線の 分光計が水酸基(OH)を見つけました。

 近赤外のデータ(図4)にあるいくつかの落ち込みの中で、3つは見事 に水の吸収スペクトルに対応しています。他の落ち込みは現在解析中です が、おそらく何らかの炭化水素でしょう。メタンかメタノールか、あるい はエタノールか? 紫外データ(図5)にある二つの輝線のうち、右側が 水酸基(OH)ですね。さて左は?

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 今回プルームの中に確認された水の量は、100 kgにも及びます。バケツ 数十杯もの水ですね。これはすごい。たまたま1ヵ所に空けた穴にこれだ けの水があるということは、周辺を掘れば掘るほど水が続々と出てくるこ とになるという期待が膨らみます。そうです。まるで石油を掘り当てた時 のようなドキドキするような予感があります。

 もちろんこの発見で月が地球のほとんどの地域のように湿った土地だと いうことになるわけではなく、地球の非常に乾燥している地帯に比べれば 水気があるというだけのことですが、それでも今後の人類の月の探査・開 拓には大きな意味を持つ画期的な発見です。

 月の南極に近いところのクレーター内部には、太陽の光が永久に射さな い場所(永久影)があり、これまでの月の探査によって、そこは非常な低 温なので凍ったままで大量の氷が存在しているのではないかと推定されて いました。そこに1998年、アメリカの月探査機「ルナー・プロスペクター」 (図6)が水の主成分である水素を見つけていたからです。しかも月面に は、インドのチャンドラヤーンという月探査機に搭載したアメリカの機器 や他の探査機によっても、大変はかないぐらいの量だけれども水がとにか く見つかってはいました(図7)。「フットボールの競技場くらいの土か らスプーン一杯ぐらいの水が見つかるかもしれない」などと言っていたの は、ついこの間のことです。今回の快挙はその水を一挙に大量に見つけた ところにあります。

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 加えて、今回は水以外の物質も飛散物の中には見つかっています。それ らは、月が現在の姿になった遠い昔に月面にぶつかってきた彗星や小惑星 など、数々の物体の衝突の歴史を、永久影の凍った状態に長い間に渡って そのまま保存していたことになるわけです。今回の飛散物の分析が進めば、 月や太陽系の過去について、もっとさまざまなバラエティに富んだ物語が 明らかになるかもしれません。

 水の分析はさまざまな情報をもたらします。たとえば太平洋の海水と北 極に降る雪とは、同位体分析によって異なる様相を示します。これからの 探査によって、永久影の氷が、彗星起源なのか、太陽風の直撃によってで きた水酸基の月面移動によるものか、何らかの月面起源なのか、はたまた 地球起源なのか、……興味ある結果を与えてくれることでしょう。

 水があれば将来月面基地を建設する時の飲料水にも使えるし、分解して 月面のドーム内での呼吸にも活用できるし、また月面でロケットの燃料を 確保できる見通しも芽生えます。さあ、この発見を受けて、オバマ大統領 がオーガスティン報告の始末をどうつけるか、またすでに検討が開始され ている日本の月探査懇談会の議論がどのように進められるか、これからの 月探査がますます楽しみになってきました。

YM

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