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YMコラム
12月9日「ブラックユーモアと平尾先生」

 ブラックユーモアというものがある。「ユーモア」というものには絶対 的な定義があるわけではないので、その解釈は人によって異なる。それは 駄洒落も同じである。笑うか笑わないか、その境目が難しい。よく考える とぞっとするようなものもあって、相当気をつけて引用しないととんでも ないことになる場合もある。

 ブラックではないユーモアの代表としては、以下のような川柳がある。

      ゆずられて 予定日聞かれ ダイエット

 名句である。しかし私としては他人事ではない。

 数年前、機内のイヤホンで全日空寄席を聴いていた。楽太郎がしゃべっ ていた。

――最近は親子の断絶が恐ろしいほど進行していますな。先日もある友人 のところに電話をしたら、娘さんが出たので、「お父さんいる?」って気 軽に訊いたら、「イラナイ」って答えやがった。そこで慌てて、「あ、お 父さん出して」って言い直したら、「もう出て行ったよ」って言うんで、 「お父さん、代わってよ」って、あらためて頼んだら「先週代わった」な んて。全く困ったもんです。

 この瞬間、私の隣に座っていた人が、思わず吹き出した。あまりに急に 吹き出したので、鼻水も一緒に飛び出した。驚いたことに、その直後に、 周囲の何人もの乗客が大声で吹き出した。普通機内で落語を聞いていて面 白い話があっても、なかなか一人きりで吹き出すことはないが、このケー スのように誰かが我慢できなくて笑いだすと、みんな一斉にタガが外れて 崩れてしまうのである。

 しかし、これを他の友人に話したら、他人の不幸をそんな言い方で面白 おかしく話す落語家なんて、ロクな奴ではない、と本気で腹を立てたので、 私はすっかり落ち込んでしまったのである。

 こんなブラックユーモアもある。ある人(Aさん)が容態の悪い友人を 病院に見舞った。病室に入ると酸素吸入マスクをしていて、非常に苦しそ うである。そして手足をバタバタさせて苦しがり、挙句の果ては、そばに あった紙切れに何事か書いてAさんに手渡し、直後に息を引き取ってしま ったのである。とりあえず紙切れを急いでポケットに放り込み、医者を呼 びに行ったその友人の対処もむなしく、友人はよみがえらなかった。帰り の電車で、ふと友人から渡された紙片を思い出して胸のポケットをさぐる と、皺くちゃになった紙切れが出てきた。開いてみて驚いた――「お前、 オレの酸素吸入の管をふんづけてるぞ!」

 これなんぞも、最近入院している人たちにとっては、見過ごすことので きないやりとりである。「そんな他人の不幸を話のタネにするなんて、と んでもない」という感想もあろう。

 私の尊敬する地球物理学の先達である故・平尾邦雄先生は、昔インドと の共同実験があって、たびたびかの地を訪れた。ある日、インドのツンバ 発射場にいて試験装置をいじっていた平尾先生が、足首にチクッと痛みを 感じた。「蟻かな」と思いながらも手を離せないので仕事を続行した。し ばらくして今度は膝のあたりに「チクッ」ときた。「あれあれ、蟻が上の 方へ登ってきやがった。今に見てろ」というわけで、なおも仕事を続けた。 直後、平尾先生は「イテエエエーーーッ!!」という痛みに卒倒せんばか りになった。つまり平尾先生は最も痛いところを咬まれたのである。急い でズボンを脱いでみたら、それはサソリだったそうである。

 インドで水を飲んでも平気だと豪語していた人だったが、さすがにサソ リには敵わなかったらしい。

 この原稿を書いているのは12月8日。真珠湾の日である。新聞を読ん でいると、「真珠湾はどこにあるか?」という質問に、「三重県」と答え る若者が結構いると言う。地理は勉強しているが、歴史は勉強していない ということか。平尾先生が御存命だったら、焼酎を傾けながらさぞかし大 いに嘆くに違いない。

 平尾邦雄先生は今年初めに亡くなった。あれから1年経とうとしている。いつもいつ も会えばブラックユーモアの数々を連発しあった大好きな先生。上のい くつかの話は、(真珠湾の話以外は)平尾先生が、涙を流しながら喜ば れたものである。これからは新しい年が明けると、いつもいつも思い出 すに違いない、私にとって大事な大事な人だった。

YM

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