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YMコラム
6月16日「その後の「はやぶさ」カプセル」

 「はやぶさ」情報です。今日16日には、カプセルのパッキングを行い、 輸送計画について最終的な打ち合せを済ませます。そして明日17日、午前 中にクリーンルームから搬出、午後にはチャーター機に乗せられます。い よいよカプセルが日本に帰って来るのです。

【設備】

 このカプセルには、小惑星イトカワから採取したサンプルが収め られている可能性があります。この貴重なサンプルを分析するために、20 08年、相模原キャンパスにキュレーション設備が完成しました(図1)。 JAXAの機関誌『JAXA’s』No.32に、藤村彰夫教授によるキュレーション設 備の解説がされています。多くの人はJAXAの機関誌を手にすることはない でしょうから、それに全面的に依拠して説明しておきましょう。

 (図1)キュレーション設備が1階にある建物
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【搬入し開梱する】

 このキュレーション設備は、正式名称は「惑星物質試 料受け入れ設備」━━いつもながら厳めしい役所型の名前ですね。オース トラリアからチャーター機で羽田に直行したカプセルは、この相模原の設 備に搬入され、(図2)の試料準備室で通関検査と開梱が行われます。分析を する現場で通関というのもオツなものですね。

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 輸送用のケースを開けていくと、二重の袋で包まれたカプセル(熱シー ルドは既に降下の際に分離されています)が出てきます(図3)。袋の中 は99.99999以上の純粋の窒素ガスで満たされています。表面のゴミを拭き 取った布や窒素も、サンプリングして保管しておきます。後々の参照用で す。ただし、袋に入ったまま、ひとまずJAXAの調布航空センターに持ち込 んで、X線CTで内部を確認する作業があります。

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 なぜ調布に運ぶかと言えば、カプセル内部には、パラシュート開傘やビ ーコン信号などを制御していた電子回路部分や、「サンプルコンテナ」を 帰還の際の熱から守る「熱制御材」など、分析には直接関係のないものも あり、これらを取り除かなくてはならないからです(図4)。取り除く際、 いろいろな部材を固定するネジの穴は埋められ、帰還時の熱で焼け焦げて いるはずです。埋まったネジの頭を探したりするにも、経験豊かなノウハ ウと設備を有している調布の航空チームの助けを借りたいわけです。

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【分解し解体する】

 そしてCTの画像データを参照しながら、工作機械を使 って分解・解体していきます。これは相模原における作業になります。分 解が終わった段階でもう一度調布に運び、再びCT撮影をします。内部をさ らに詳しく調べ、サンプルコンテナの蓋のシールの状況やラッチ機構の確 認などを行うのです(図4)。この蓋は2007年1月に最終的に閉じら れたものです。

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 次いでサンプルコンテナの表面を洗浄します。これは非常に徹底したも ので、まず高純度の窒素ガスを吹き付け、次にドライアイス粉末を吹き付 けて気化する二酸化炭素の勢いでダストを弾き飛ばします。最後に大気圧 プラズマ洗浄で、表面の金属の層を薄く剥ぎます。蓋の隙間の溝も極細ノ ズルの真空掃除機を使って可能な限り綺麗にします。

 そしてサンプルコンテナを試料準備室に持ち込んで専用の開封機構にセ ットし、蓋を押さえつけた状態のままでラッチを外します(図5)。次に 惑星試料処理室へ開封機構ごと移動します。この部屋の環境は非常に高い レベルに維持しなければなりません。一度に入室できる人数も厳格に制限 しており、化粧品や整髪料をつけたままの入室も禁じられています。入る までに履物も2度履き替える必要があるなどなどなど。

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【いよいよ開封する】

 クリーンルームの最も奥まった部屋に置かれている クリーンチャンバーの第一室に、開封機構ごとサンプルコンテナを組み込 みます。この部屋の内部の気圧をコンテナの内圧にぴったり合うように調 整しながら、サンプルコンテナの蓋をわずかに上下に動かします。蓋とコ ンテナは金属同士で密着していますが、弾性変形の範囲内でわずかに動き ます。こうしないと、気体が中から噴出したり、外から入り込んだりする からです。どれほど動いたかを精密に計測しながら、内部の気圧を推定す るのです。

 真空の宇宙で採取されたサンプルですが、たとえば太陽風や宇宙線の粒 子に由来する気体が、サンプルから揮発する可能性があるわけですね。

 さあ、いよいよコンテナ内部からサンプルキャッチャーを取り出します。 取り出した後のコンテナ部分は、超高真空を維持した環境で保管して、将 来の分析に備えます。

 肝腎のサンプルキャッチャーを傾け、こぼれ落ちたサンプルを石英の皿 に取り分けます。出てこなければ特殊なヘラでかき出します(図6)。こ れは顕微鏡で見ながら、もらさず回収しなければなりませんね。ただ入っ ているはずのものは間違いなく小さいでしょうから、この作業は非常に時 間がかかると思われます。

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 また必要に応じてマイクロマニピュレータを使い、先端直径が1μm以 下の石英針でサンプルを扱う必要も生じてくるでしょう(図7)。これは 遺伝子工学で、細胞核の中に遺伝子を注入するときに使われる極細の針を 応用したものです。ハンドリングには静電気を利用しています。針の中空 部分に電極を入れてあり、試料などを入れた皿の下のステージと、針の内 部の電極の電位差を制御することで、試料を吸いつけたり落としたりする わけです。セルロイドの下敷き腋の下でこすって、髪の毛の埃を吸いつけ たりして遊びましたね。

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【サンプルを研究者に配布する】

 その後初期分析チームにサンプルが配布 されます。分析技術やハンドリングの体制について、厳しい審査と実技試 験も含む選抜をくぐりぬけてきたチームを中心に、北海道大・茨城大・東 京大・首都大学東京・大阪大・岡山大・九州大の研究者などで構成されて います。太陽系の起源と進化へのどのようなヒントが飛び出してくるか、 今から楽しみですね。

(YM)

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