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11月17日「宇宙開発史に残る小惑星「イトカワ」からの粒子確認」

 「はやぶさ」に勲章がまた一つ加わった。一番驚いたのは、日本経済新 聞の夕刊のトップ記事だったことである(図1)。しかも日経は特報も出 した(図2)。経済記事がなかったのかもしれないが、前代未聞のこと。 月表面からは、1960年代から70年代にかけて米ソが岩石を持ち帰ったが、 月以外の天体の表面から採取された物質は、これが世界で初めてのことで あり、歴史に残る快挙である。「はやぶさ」の地球帰還以来、腕を撫して いた分析チームは、忍耐の要る大変な作業に取り組んできた。「はやぶさ」 チームの本隊に対してはもちろんだが、藤村彰夫くんを中心とするこの分 析チームのみなさんの、夜を日に継いだ労苦の成果に対し、心から「おめ でとう」の言葉を贈らせていただきたい。見事な「匠の勝利」である。

(図1)日経のトップ記事になった「はやぶさ」微粒子(一部)
http://www.ku-ma.or.jp/ym/ym101117-01.jpg

(図2)日経の特報
http://www.ku-ma.or.jp/ym/ym101117-02.jpg

 46億年前に太陽が誕生した直後、周辺を渦巻くガスや塵の中から固体惑 星が生まれるプロセスは、もちろん小さな塊から大きな塊が形づくられて いったものであることは疑いないが、その頃のそのままの物質を体内に保 存しているのは、重力による熱変成を受けることのない小さな天体だけで あると考えられている。そのサンプルを現実に地球に持ち帰る技術を、世 界に先駆けて手にした「はやぶさ」の功績は、長く人類の記憶にとどめら れるであろう。

 6月にオーストラリアから相模原の宇宙科学研究所に7年ぶりで戻ってき た「はやぶさ」カプセルのサンプル容器は、特設の密閉分析室で慎重に開 封された。そして中を覗いた時、サンプル分析のチームを率いる藤村彰夫 くんは青ざめたという。目視で確認できる範囲にはもちろん、光学顕微鏡 によっても、見えるものはほとんどなく、確認できた粒子の大半はすぐに 容器から出たアルミニウムの欠片と判明したのである。

 分析チームは、特殊に工夫したフッ素樹脂製の「へら」を使って試料容 器の内壁をこすり、「へら」ごと電子顕微鏡で観察し、さらに小さな微粒 子を回収することに成功した(図3)。その多くが0.001〜0.01mmレベルに なったので、電子線を当てて成分を分析する「走査型電子顕微鏡」の力を 借りて、見つかった1500個の粒子の一つ一つを慎重に、すべて調べ上げた。 その多くは橄欖(かんらん)石で、中には輝石や斜長石もあった。これら に電子をぶつけるとX線が出てくるが、その波長から鉄とマグネシウムの 比率が分かる。そして、ついにそのほとんどすべてが地上の物質とは全く 異なる粒子であると確信するに至った。

(図3)「はやぶさ」微粒子の電子顕微鏡写真
http://www.ku-ma.or.jp/ym/ym101117-03.jpg

 図4を見ていただきたい。地上の物質と異なる理由は、まず第一に、そ れらの微粒子が含む鉄とマグネシウムの比率が地球にある橄欖石が含む比 率の5倍以上であり、全く異なること。第二に、その比率が(イトカワと 同じ)小惑星の「なれの果て」である隕石とほぼ同じであることが判明し たこと。第三に、「はやぶさ」が(2005年秋に)イトカワを接近観測した 際の赤外線写真によって明らかになっていた成分と同じだったこと、であ る。当初の予定では、来年初めに初期分析を行ってイトカワ起源かどうか を判定する予定だったが、特徴が明確に確認されたので、判断を前倒しし て今回発表したのである。

(図4)粒子がイトカワ起源である証拠
http://www.ku-ma.or.jp/ym/ym101117-04.jpg

 さてここまではまことに「匠の勝利」であって、工学実験機としての 「はやぶさ」の達成度が極限まで届いたと言うべきであろうが、これから が本当の「理学部」の領域に入る。今後、イトカワの微粒子は、兵庫県の 大型放射光施設「スプリング8」や日本の精鋭の研究者たち、そしてミッ ションに協力してくれたアメリカとオーストラリアの研究者たちにも配ら れ、より詳細な分析に入っていく。この「はやぶさ」の持ち帰ったサンプ ルだけですべてが分かるわけではもちろんないが、小惑星のでき方や太陽 系の真理たちなどに迫る分析ができるかどうか、これからも腕の見せどこ ろがつづいていく。

 これで「はやぶさ2」への弾みがついた。何とか予算を認めていただき、 この世界の最先端を走る日本の誇るべき分野を、さらに確かなものにして いきたいものである。

(YM)

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