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YMコラム
4月14日「科学衛星の命名ものがたり(2)」

 大震災でしばらく定常状態から外れていた「YMコラム」ですが、そろそ ろ元に戻る必要のある事柄もあるので、とりあえず1回だけ連載を始めて 中断していた「科学衛星の命名ものがたり」を続行します。

 前回は第一号科学衛星「しんせい」まで書きました。

 「でんぱ」(電波:DENPA)(旧名REX)── 命名事始めの趣き

 「しんせい」までは、「初の……」という記念碑的な衛星だったのです が、ここからいわば定常的な科学衛星打ち上げの時期に入りました(図1)。 それだけに、実験班の投票は続いてはいたものの、なかなか冴えわたるよ うないい名前がなく、衛星チームがいろいろと熱心に頭を絞るというのが 定例であった時代です。この衛星が測定したのは、プラズマ波やプラズマ 密度、電子粒子線、電磁波、地磁気などでしたが、衛星の名前を決めるの には難航し、ずいぶん議論したうえで、「でんぱ」なんてあまりに当たり 前過ぎるネーミングで、みんなの投票の情熱が失われるような命名だった と、主観的には感じます。


(図1)「でんぱ」打上げ後に町の子どもたちから祝福されるISAS幹部

 「たんせい2」(淡青2:TANSEI-2)(旧名MS-T2)── M-3Cロケットの試験衛星

 1段目に制御装置を導入して「風任せ」の風評を打破したM-3Cロケット の初号機(図2)で打ち上げた衛星。ロケットを改良して新しいバージョ ンになったら、必ず1号機はロケットの能力確認を行うということが習慣 となりましたが、その後に続いてくる衛星のテストも兼ねて試験衛星を搭 載することも、「たんせい」同様に習慣となっていきました。したがって、 このM-3C-1ロケットで運んだ試験衛星は、最初の「たんせい」と同様の趣 旨を持つ衛星ということで、「たんせい2」と名づけられたわけです。


(図2)M-3C-1による「たんせい2」打ち上げ

 「たいよう」(太陽:TAIYO)(旧名SRATS)── 超高層大気の観測

 太陽軟X線、太陽真空紫外放射線、紫外地球コロナ輝線などを観測する 衛星だというので、これも多少常識的すぎる命名となりました。この衛星 の打ち上げオペレーションの時に、鹿児島に数十年ぶりの大雪が降り、発 射場まで車が登れないという事態が起きました。これは懐かしい思い出で、 非常に難儀をして軌道に送ったのですが、衛星自体は、残念ながら短命に 終わりました(図3)。


(図3)「たいよう」

 「たんせい3」(淡青3:TANSEI-3)(旧名MS-T3)── M-3Hロケットの試験衛星

 それまでの衛星はすべてほぼ東に向けて打ち上げていましたが、ISASの 衛星としては初めて高い軌道傾斜角(66度)に乗せました(図4)。それ は、これに続くオーロラ観測衛星を頭に置いてのことでした。試験衛星な ので、例によって「たんせい3」と命名。


(図4)南南東への「たんせい3」の打ち上げ(M-3H-1)

 「きょっこう」(極光:KYOKKO)(旧名EXOS-A)── オーロラ観測衛星

 プラズマの密度・温度・組成、電子エネルギーの分布、地球コロナ分布 等の観測、オーロラの紫外線撮像という目的をもっていたわけですが、何 といっても「オーロラ」に結び付ける方が分かりやすいだろうというので、 その日本語「きょっこう」が採用されました。安易な命名に見えますが、 日本語自体が美しい響きをもっているため、評判はよかったのです。旧名 はExosphereの観測をする衛星を系統化しようというので、“EXOS”系の 1号機としてEXOS-Aと名づけましたが、EXOSは、その後プラズマ物理学系 の衛星シリーズを象徴する名前となりました。「きょっこう」は世界で初 めて、オーロラのグローバルな紫外線像を宇宙からとらえて勇名を轟かせ ました(図5)。


(図5)「きょっこう」がとらえたオーロラ紫外線像

 「じきけん」(磁気圏:JIKIKEN)(旧名EXOS-B)── EXOS系の2番機

 文字通り磁気圏の挙動と構造を極めようというので、電子密度、粒子線、 プラズマ波等の観測を目的としたのですが、一般に「磁気圏」という言葉 が人工に膾炙していないので、意図的にそれを衛星名にして、言葉自体を 流布させようとする意味もありました(図6)。


(図6)「じきけん」の誕生に乾杯

 「はくちょう」(白鳥:HAKUCHO)(旧名CORSA-b)

 1976年2月に日本初のX線天文衛星CORSAをM-3C-3ロケットで打ち上げて 失敗した後を受け、大急ぎで雪辱戦に挑んだもの。だからすでにM-3Cを改 良したM-3Hの時代になってはいたのですが、衛星はほぼそのままのものを 搭載したので、ロケットもM-3Cロケットの4号機が使われました。CORSAは、 Cosmic Radiation Satelliteの略です。

 この衛星の命名をめぐっては、どうしても触れておかなければならない エピソードがあります。実は、この衛星は、衛星を準備したグループの若 い人たちの間では、「ぎんが」という名前で暗黙の了解がありました。だ からみんなの運用ノートの表紙には、打ち上げ前から当然のように「ぎん が」という文字が書いてあったのを記憶しています。しかし衛星主任の小 田稔教授(図7)は、当時ブラックホールの第一候補だった有名なX線星 「はくちょう座X-1」に因んだ名前を欲しており、このお気にいりの星を どうしても衛星の名前にしてくれと懇願しました。「X線天文学のドン」 には逆らえず、苦笑のうちに「はくちょう」(図8、図9)という名前が了 承されました。でも白鳥の姿を思い出すと優雅でしたし、音の響きも清々 しくて、いい名前でした。


(図7)小田稔教授(中央)


(図8)すだれコリメーターを搭載した「はくちょう」の軟X線検出装置


(図9)「はくちょう座」(フラムスティード天球図譜)

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