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YMコラム
10月14日「「はやぶさ」の四大危機(1) 」

─リアクションホイール2つが故障(2005年10月2日)

 「はやぶさ」に寄せられる反響の中では、その危機の脱し方に対する感動が最も大きいものであることは言を俟ちません。もちろん、太陽系の起源とかイオンエンジンなどの新しい技術への関心は高いのですが、あらゆる階層の老若男女という母集団で総括すれば、やはりそれは危機に陥った時の「はやぶさ」チームの対処の仕方が、最も多くの人の共感を呼んでいることは疑いありません。そこで今週から、4回にわたって、四大危機の一つ一つを採り上げて、その状況を整理し、その突破の原動力やそこから得た教訓を議論して行こうと思います。

 まず2005年10月2日、姿勢制御の主役を担う3つのリアクションホイールのうち、2つが故障した時の話(図1)。すでに往路の途中で1つは故障しており、打ち上げ前から、担当の橋本樹明くんが、「1つぐらいは故障する」可能性については言及していました。この3軸に沿って一つずつ配置されたホイールのどれかが故障すると、その機能はガスジェットが受け持つはめになります。ガスジェットの出口は12個あり、それを複数組み合わせてジェットを噴いて代役を務めるのですが、ガスジェット(図2)というのは、小なりといえども一応ロケットですから、「はやぶさ」を回転させるだけでなく、どうしても多少は位置の移動も伴います。つまりガスジェットで制御すると多少のふらつきを伴うのですね。


(図1)3つのリアクションホイール


(図2)ガスジェットの噴射口(○内)

 ホイールの故障が1つだけなら、打ち上げ前に、橋本樹明くん(図3)の予言があったので、オペレーターはそれなりの訓練を積んでいました。往路のホイール1個の故障ということは、無難に乗り切ったのです。しかしイトカワの近くに到着して、2005年10月2日、「さあ、降りるぞ」と勢い込んでいるまさにその時、2個目のホイールが動かなくなったのです。「橋本先生、2つ故障するなんて聞いてないですよ」──オペレーターの悲鳴をよそに、橋本君は「1つ故障したら2つ目も危ないというのは理の当然だよ」という「顔」をしていましたが、このニューヨークの近くで作ってもらったホイールについては、M-Vロケットで打ち上げるということもあって、多少こちらで固体ロケット用の振動対策として若干の補強をしていました(図4)。いろいろ調べた結果、どうもその金属テープが剥がれてホイールに巻き込まれたのかも知れません。


(図3)スウィングバイの状況を見つめる橋本樹明くん(中央)と川口淳一郎くん(左)


(図4)宇宙開発委員会に報告したホイールの不具合

 それはともかく、さあ大変、ホイールが2軸駄目になったら、当然その2つの軸まわりの制御はガスジェットが受け持つのですが、これが「2次元のふらつき」という厄介な現象を起こします。これがオペレーター泣かせなのですね。プロジェクトマネジャーの川口淳一郎くん(図3)は、いろいろと相談した結果、10月8日から27日までの約20日間、オペレーターがガスジェットを使いこなせるようになるための操縦訓練にあてることにしました。まあ、この間、訓練ばかりではもったいないこともあって、小惑星イトカワの科学観測を実施するようさらに詳細に指令を出しました。

 もちろんすでにイトカワ付近に到着した秋先ごろから、着地点を探す努力をするための観測は随分と実施はしていましたが、今回の観測が実施されれば、さらに面白いデータがとれるわけで、理学部の人たちにとっては大変楽しみな事態になって来ました。そして事実この20日間の科学観測は、世界に前例のないたくさんのデータを提供してくれたのです(図5)。


(図5)小惑星イトカワの詳細データの例

 そして20日間の訓練を経て、オペレーション・チームは意気軒昂にタッチダウンを目指したのでした。まだオペレーターは自信がなさそうな顔をしていましたが、いくら何でも訓練だけで終わるわけにも行かないので、ついにプロマネが決意した11月20日、最初のタッチダウンが敢行されました。そして予想もしないイトカワ表面でのバウンド!(図6) そして1週間後の11月26日に2度目のタッチダウン。その詳細は他に譲るとして、この2個のリアクションホイールの故障という最初の危機を乗り越えた原動力ということになると、私にはそれが「想定外の想定」ということになるのではないかと考えています。宇宙の事故では、決して現場に行けないという制限が付きまといます。それだけにどんなことが起きても驚かない覚悟が必要です。とりわけリーダーたちが「想定外だ」というので同様したら、そのミッションはもうお終いでしょう。


(図6)第一回タッチダウンでのバウンドの履歴

 この「はやぶさ」の最初の危機は、12月初めにイトカワのそばを出発しなければ地球に帰れないという条件のもとで、10月2日に勃発した事件でした。あと2カ月のうちに3回タッチダウンを敢行したかったわけで、2個のホイールという「想定外」の事態は、あせりに似た感情をもたらしたのではないかとも思います。川口淳一郎くんを中心とするチームは、そんな状況を冷静に受け止め、20日間にわたるギリギリの「訓練」を敢行し、切り抜けたのでした。(つづく)

(YM)

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