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11月9日「マーズ500終了──仮想有人火星飛行の訓練」

 昨年7月3日19時(日本標準時)、モスクワにある生物学医学問題研究所(IBMP)の駐車場に設えられた特別仕立ての設備に6人の人物が乗り込みました(図1)。それは、近い未来に実行されるであろう人類初の火星飛行に備えて、予想されるさまざまな問題・課題に挑戦あるいはそれらへの対応を検証するためでした。このプロジェクトの名称を「マーズ500(Mars500)」といいます。500日の滞在をめざしたのです。


(図1)Mars500の6人のクルー

 6人とは、3人のロシア人に加えて、中国、フランス、イタリアから一人ずつのクルーです。そのマーズ500の実験が成功裏に終了し、さる11月4日、17ヵ月(520日)ぶりに設備のハッチが開かれました(図2)。ブルーのジャンプスーツに身を包まれたクルーが次々とハッチから姿を現し手を振るのを、友人や家族があたたかく迎えました。6人のクルーは、今後医学的・心理学的なチェックを受けたのち、11月8日にモスクワで記者会見を開く予定です。


(図2)ハッチから姿を現した6人

 クルーは、惑星間飛行をできる限りで模擬した設備(図3)に閉じ込められ、火星有人飛行の途上で予期されるさまざまな出来事──火星までの長期にわたる飛行、火星周回軌道への投入、火星着陸、火星表面の探査、火星周回軌道への帰還、単調な地球への復路、地表への帰還など──に最大限忠実に出会うようにプログラムが組まれました(図4)。 そのプログラムには、通信のブラックアウトを含むストレスなどの心理学的なテストも含まれています。今回実現できなかったのは、おそらく無重力環境と放射線環境、それにあの荒涼とした火星表面での滞在経験(これらも、ちょっとだけは類似のものを実行したようですが:図5、図6)でしょう。


(図3)マーズ500の設備


(図4)火星での体験用設備の概要


(図5)無重量体験(2011.4.1)


(図6)荒涼たる火星のような地形での体験

 この「仮想飛行」で、クルーは長期にわたる人間の深宇宙飛行にまつわる100以上の実験をこなしました。マーズ500の設備内と外の管制室とは、もちろん連絡をとりつづけていたわけですが、実際の飛行と同様に、その会話には宇宙船の地球からの距離に応じた通信の時間遅れもしっかりと再現していたということです。

 当局の発表によれば、6人のクルーは、太陽の光からも新鮮な空気からも、また愛する人々からも隔絶された中で非常に立派な働きをし、閉鎖環境にあっても(図7)、長時間の火星有人飛行が可能であることを、雄弁に証明してくれたということです。ロスコスモスのヴィターリ・ダヴィドフ副長官は、「これから20年以内に火星への有人飛行を行うことは考えられない。2030年代の半ばがその実行の時になるのではないか」と語っています。


(図7)閉鎖環境での生活

 因みに今回の彼らが受けた報酬は、300万ルーブルと伝えられています。彼らがハッチから出た時、ロシアの若い女性から花束をもらったのですが、彼女は彼らが18か月ぶりに会った女性だったということになります。実はこのチームは男女混合チームで組む予定もあったのですが、2000年に類似のテストをしたとき、ロシア人の一人のクルーが、カナダの女性クルーに無理やりフレンチキッスをしようとした事件があり、科学者が検討した結果、男性6人だけで編成することに決まったという経過がありました。なお彼らの行った一連の実験の結果・成果は、12月に公開される予定になっています。

(YM)

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