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YMコラム
1月20日「フォボス・グルントの落下」

 寒い季節になりましたね。雪が降って来るんじゃないかと思っていたら、もっと上から衛星のかけらが降って来たと言うのですから、これは寒さどころではないなと。

 昨年11月9日(日本時間)にゼニット2ロケット(図1)に搭載されてバイコヌールを飛び立った火星探査機フォボス・グルント(図2)は、エンジントラブルで惑星間飛行に飛び出すことができず、高度345 kmで失速、そして地上との交信が途絶しました。このように低い軌道に入った衛星は、地球大気の抵抗によって徐々にエネルギーを失って軌道が小さくなっていきます。そして高度が150 kmを切ったあたりから急速に落下を始め、濃い大気圏に突入すると、衛星本体はバラバラになって消滅します。しかし大きな部品や融点の高い材料は大気中で溶け終わることができず、地上まで届くものもあるのです(図3)。


(図1)フォボス・グルント打ち上げ(2011年11月9日、ゼニット2ロケット).


(図2)フォボス・グルント探査機


(図3)大気圏に突入したフォボス・グルント(想像図)

 打ち上げ時に14.9トンあったフォボス・グルントは、最終的には日本、ソロモン諸島の上空を飛び、オーストラリアとニュージーランドの東方の空を通過してから、ほぼ200 kg余の残骸が20個から30個のかけらとなって南太平洋に落下したようです。着水したのは、南米チリの西方に浮かぶウェリントン島の西1250 kmの海上と言われています(図4)。


(図4)フォボス・グルントの破片が着水した海域

 もともとこのフォボス・グルントは、火星の衛星フォボスに着陸してサンプルをとり、2014年に地球に帰還して硬着陸する予定でしたから、そのカプセルは大気圏突入によって壊れないようにできていたでしょうから、今回の落下に耐えたと思われます。搭載していた毒性の燃料やその容器(アルミ製)は、高度100 kmより上で溶けてしまったでしょう。

 ここ半年で4機目の宇宙機の落下です。まず昨年8月にロシアのISS無人補給船「プログレス」の破片がシベリアに落下しました。まあこれは制御落下ですからいいとして、昨年9月にアメリカのUARS衛星の破片が太平洋に落下、10月にはX線天文衛星レントゲン(ドイツ)のかけらがベンガル湾に落ちたわけですが、それに次ぐものです。

 大きな衛星の破片が地上に落ちてきた記憶はいろいろあります。まず1978年に当時ソ連の偵察衛星コスモス954がカナダの平原に落下しました。この時は、ソ連はカナダに放射性物質の除去にかかる300万米ドルを支払ったと言われています。1979年にはアメリカの宇宙ステーション「スカイラブ」の破片が落下しましたね。2001年のロシアの宇宙ステーション「ミール」の落下も大騒ぎでしたね。 今回の落下に際しては、そもそも地上に落下した破片が70億人という世界の人口のうちの一人に当たる確率が3000分の1だという発表がどこかからされたようで、これがどういう意味なのか一般にはさっぱり分からないわけです。

 マスコミからの取材もいろいろありました。この3000分の1の確率は、どう解釈すればいいのですか、と。これを信じれば、落下した破片が自分に当たる確率は20兆分の1になるので、これは途方もなく小さな確率になるのです。ただ、そういうエラく小さい数字を言って安心させるというのが、技術の危険性のレベルを納得してもらうテクニックとしていつでも罷り通るのは、私としてはどうかなという感じがあって、どうも寝覚めが良くありません。デブリの問題は、人類の宇宙開発が解決していない課題として、いつも新鮮な問題意識を向けていなければならないと考えています。

 さる1月11日には、アメリカの宇宙監視チームが、「イリジウム33」という衛星(図5)の破片が国際宇宙ステーション(ISS:図6)の近くを通ることに気づき、NASA(米国航空宇宙局)に知らせました。翌日、その破片が大きさ10 cmのもので、ISSに衝突する危険があるので、回避行動をした方がいいことが分かりました。


(図5)軌道上のイリジウム33衛星(想像図)


(図6)軌道上のISS

 相談の結果、ISSの一部であるロシアのモジュール「ズヴェズダー」(図7)のエンジン噴射を地上局から操作して実行し、ISSの高度を300 mばかり上昇させました。その間、6人の飛行士が乗っているISSでは平常通りの生活をしていたそうです。


(図7)スペースデブリ回避のためエンジン噴射したISSのズヴェズダーモジュール

 ISSがこのようなデブリ回避行動を起こしたのは、ISS建設が始まってから13回目のことです。ということは、1年に1度くらいそのような行動を起こしているということですね。実はスペースシャトルもそうでした。スペースシャトルが宇宙を飛んでいるのは、それぞれ2週間ぐらいで、ISSほど長くはありませんが、それでもやはり時々はこの回避行動をしていたのです。

 このデブリ回避行動はDAM(Debris Avoidance Maneuver)と呼ばれています。ところでみなさんは小学校の時にドッジボールを楽しみましたよね。あのドッジ(dodge)という言葉はどういう意味か知っていますか? あれはこのISSやスペースシャトルのように「ひらりと身をかわす」という意味なのです。そう考えると「ドッジボール」というスポーツの名前には何となく納得がいきますね。

 先日、沖縄に行って「名護青少年の家」に泊めていただいたのですが、そこに同宿していた中学のクラブの部屋に「闘球部」という字が書いてありました。籠球(バスケットボール)、蹴球、野球、卓球、排球(バレーボール)、送球(ハンドボール)など、私の知っているスポーツを次々と思い浮かべましたが、「闘球」というのは思い当たりませんでした。思い切って訊ねたら、「闘球」って、ドッジボールのことでした。

(YM)

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