入会案内
コンテンツ
KU-MAについて
リンク
会員向け
KU-MAの
おすすめ

世界でいちばん素敵な
宇宙の教室


超巨大ブラックホールに迫る
「はるか」が作った3万kmの瞳


自然の謎と
科学のロマン(上)

Newton編集長の実験と工作動くもの浮くものの不思議

Newton編集長の実験と工作─光や電気の不思議─


小惑星探査機「はやぶさ2」の大挑戦 太陽系と生命の起源を探る壮大なミッション


新しい宇宙のひみつQ&A


宇宙人に会いたい!: 天文学者が探る地球外生命のなぞ


宇宙の始まりはどこまで見えたか? 137億年、宇宙の旅

他にもおすすめがあります

YMコラム
1月26日「消えた7万本──陸前高田の一本松」

 また東北に行ってきました。大船渡です。前日は一関市内のホテルに一泊しました。翌日大船渡市の車が迎えに来てくれました。「はやぶさ」カプセル展示の記念講演だったためでしょう。その車で被災地を案内してもらいつつ、気仙町から陸前高田を経て大船渡へ入りました。

 気仙町は気仙沼市(宮城県)と違って岩手県にあります。多分あの気仙川の支流でしょうが、途中に小さな川があり、運転手さんの話だと、その川で自衛隊が作業をしていて6000万円の現金が見つかったんだそうです。陸前高田の方から流れて来たものらしいのですが、家と一緒に流れてきたのでしょうから、いわゆるタンス貯金なのでしょうね。自衛隊員の間で、「陸前高田の人はタンス貯金がいっぱいある」という評判が立っているだろうとのことでした。

 気仙町のかつての商店街の無残な姿を見ながら、陸前高田に入りました。遠くからあの一本松が見えました(図1)。前に来た時に茶色に変色しているのが気になったので、車を寄せてもらうことができるようになっているのをいいことに、すぐ近くまで車を寄せてもらいました。足場が悪く、靴は泥まみれになり、膝が悪いので非常に慎重に歩く必要がありましたが、時間をかけてやっとすぐ手前の「しおさい橋」(図2)にたどり着き、松に接近しました。


(図1)一本松遠景


(図2)しおさい橋

 一本松が予想以上に弱っているのが見てとれました(図3)。足元に小さな札があり、何やら書いてあります(図4)。近寄ってみると、書いてあるのは、「一本松の願い」でした。


(図3)一本松近景


(図4)何やら書いてある

 ──少し休みます。枯れても切らないでね。変わったかたちで甦りますから──(図5)。


(図5)一本松の願い

 その下にはお札が貼ってあります(図6)。そして周囲に、感謝の言葉が……「絆と力そして希望をありがとう!! 高田に人々はきっと美しい高田松原を再生してくれます(図7)。


(図6)お札


(図7)感謝の言葉

 何とも言えない気分を抱えたまま柵の外に出て、ふと振り返った目に飛び込んできたのは、図8の注意書きでした。すぐそばに大船渡市の職員の方がいたんだけどなあ。その人もここに来たのは初めての様子でした。運転手さんが説明してくれたところによれば、もうこの松も長くはないので、枝を切っては鉢植えに挿し木をしているそうです。そしていつの日にか、あの高田松原をよみがえらせたいとのこと──そうか、松のそばに書いてあった「変わったかたちで」の一節はそういう意味なのかと思い当たりました。


(図8)注意書き

 後ろ髪引かれる想いでそこを離れ、少し遠くから眺めると、あの孤独な松から東には一本として松の木は立っていないのです。かつては7万本あったというのに。見事に失われた松たち。それにしてもどうしてあの松田だけが生き延びたのでしょう。あの松の近くにある「しおさい橋」は、沼にかかっている橋です。その沼は、若者たちがボートの練習をするためのもので、すぐそばは気仙川が流れています。そして一本松のすぐ近くに水門もあります(図9)。そこから東へは見事に伸びた海岸が、何一つさえぎるものもなく、「津波さん、いらっしゃい」と言っているかのようなひろがりを持っているのです。つまり周辺の複雑な地形や建築物が、緩衝剤となって、あの松を守ったのだと、今更ながら気づきました。そのボートの練習のための合宿所になっていたであろう青少年センターも惨めな姿で辛うじて建っていました(図10)。


(図9)水門などが周囲に


(図10)青少年センター

 そこから大船渡へ向かう途中、「貝の博物館」が優雅に立っている(内部は使えないんですが……)のも見ました(図11)し、この地域の産業基盤を支え発展させるはずだった農業センターも建設半ばで打ち壊されてしまいました(図12)。大船渡のめざましい復興ぶりと比べると、陸前高田の方は、ガレキを寄せる作業だけで手いっぱいなのか、明らかに復興が後れています。まだまだ待つ以外にない人々がたくさんいるのだと実感しつつ大船渡に入りました。


(図11)貝の博物館


(図12)農業センター建設跡地

(YM)

TOPKU-MAについて入会案内リンク会員向け

このサイトの内容の無断転載・複製を禁止します