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8月23日「火星への夢」

 8月22日の未明に視点・論点で「火星への夢」と題して話しました。いつものように十分には論を尽くせなかったので、元の原稿を掲載します。

  1 【キュリオシティ着陸】

 さる8月6日、NASA(アメリカ航空宇宙局)の技術の粋を集めた火星ローバー「キュリオシティ」が、火星の赤い大地に着陸しました(図1)。重量約1トンの大型ローバーは、小型の乗用車くらいの大きさです(図2)。重さは私の十倍ということになります。


(図1)「キュリオシティ」の火星着陸


(図2)「キュリオシティ」の大きさの比較(左にパスファインダーとオポチュニティ)

 昨年4月にフロリダを旅立ってから、36週間飛び続けて火星に到着し、母機であるMSL(火星科学実験船)から25フィートのロープに吊るされ、スカイクレーンという独特の方法(図3)を用いて、赤い火星表面のゲイル・クレーター(図4)の中に降り立ったのです。


(図3)スカイクレーンによる着陸


(図4)ゲイル・クレーター

 「キュリオシティ」は原子力電池を積んでおり、これから2年間にわたって、火星表面を動き回り、生命の痕跡を探ります。すでに何枚もの画像を送ってきていますし(図5)、レーザーを岩石に照射して成分を調べる作業(図6)やロボットアームを使ってサンプルを収集する作業(図7)なども始まっています。


(図5)「キュリオシティ」が送って来た画像


(図6)レーザーを照射して成分を調べる


(図7)ロボットアームを伸ばす「キュリオシティ」

 NASAのマーズ・リコネイサンス・オービター(MRO)がその「キュリオシティ」を画像におさめています(図8)。周辺の様子は図9のようになっています。


(図8)NASAのMROがとらえた「キュリオシティ」(青色の中)


(図9)「キュリオシティ」の着陸地と最初の調査目的地(青い点)

  2 【火星ラッシュ】

 「キュリオシティ」着陸のちょっと前、インドが、火星の気候や地質の調査を目的として、2013年11月に、火星の軌道を周回する探査機を打ち上げることを宣言しました。ご存知の通り、すでにロシアは1960年代から度々火星ミッションに挑んでいます。日本も1998年に火星探査機「のぞみ」を打ち上げていますし、2003年以来、ヨーロッパの「マーズ・エクスプレス」という火星周回機も活躍しています。

 また中国も昨年、「フォボス・グルント」というロシアの火星ミッションに便乗するかたちではありますが「蛍火1号」(図10)という初の火星探査機を送っていますし、中国独自の火星探査機を打ち上げる計画も発表しています。新たな動きとしては、日本で、火星で飛行機を飛ばすことを含むMELOSという計画も検討されています(図11)。


(図10)蛍火1号


(図11)MELOS計画

 まさに「火星ラッシュ」ですね。それは、1990年代に大型の月探査機「かぐや」を日本が月へ送ってから、アメリカ、中国、インド、ヨーロッパと続いた、「ふたたび月へ」というブームの火星版のような印象を受けます。

  3 【なぜいま火星か?──水と生命】

 どうしてこれほど火星が世界の宇宙機関の関心を呼んでいるのでしょうか。ご存知のように、火星は昔から、「赤い色」をした特異な惑星として注目されていました。そして19世紀に、火星に運河が見つかったというニュースが流れ(図12)、それならばその運河を作った人間がいるんだろうということで、一挙に「火星人」(図13)論争が燃え上がったのでした。


(図12)火星の運河を暗示するさまざまなスケッチ


(図13)H.G.ウェルズの描いた火星人

 人類が火星に探査機を送る時代になって、実地調査によって、結局は「火星人」はいないことになりましたが、アメリカの周回機、着陸機、ローバーの相次ぐ綿密な調査によって、火星にかつて水が存在したに違いない証拠が見つかり、また現在でも火星の地下には、氷のかたちでH2Oが存在していると考えられるようになりました。

 そしてそこから、火星には、かつて生命がいたのではないか、さらに、ひょっとすると現在でも原始的な生命のいる可能性が、浮かび上がってきたわけです。

  4 【生命探査の相貌と人類史的意味】

 私たちの太陽系には、火星の他に、木星の衛星エウロパ、ガニメデ、土星の衛星タイタン、エンケラドスなどに、水や生命の可能性が囁かれています。また1995年に初めて太陽系外の惑星がペガサス座で発見されて以来、続々と系外惑星が見つかっており、それらのよその惑星にも生命の存在を期待する声がいずれ高まってくるでしょう。

 「はやぶさ」のように小惑星のサンプルをとってきたり、金星や水星などの内惑星、木星や土星などの外惑星など、さまざまな太陽系天体を訪れることで、太陽系の起源を探るきらびやかなミッションは、「私たちのルーツを探る大切な課題」として、ひきつづき精力的に取り組まれるでしょうが、これと並んで、火星を中心に展開される生命探査のミッションは、他の太陽系に生命を探す仕事とともに、この地球の人類の文明の位置づけを考える上で極めて衝撃的な影響を持つテーマであると言わざるをえません。これが昨今の「火星ラッシュ」の重要な一つの契機でしょう。

  5 【有人火星へのつながりとアポロ】

 もう一つ、火星探査に大きな意義づけを与えるものがあります。人間を火星に着陸させて地球に帰還させるという挑戦です。アメリカは2030年代半ばに、飛行士を火星に送る壮大な計画を持っています(図14)。


(図14)アメリカの有人火星飛行(想像図)

 これは一見、あの月へ人間が着陸して地球に帰還した1960年代から70年代にかけての「アポロ計画」を想起させますが、見過ごしてならないのは、有人火星飛行ミッションが、アメリカ一国では到底成し遂げることのできない規模のものにならざるを得ないことです。アメリカが有人火星ミッションを提案したとしても、各国の現在の政治・経済の状況は、それだけの動機づけや財政負担に応じることを許さないでしょう。

 現在、2020年に終焉を迎える国際宇宙ステーション計画の後の計画が模索されています。私は、その目玉となるのは、恐らくは「月面基地の建設」であろうと予想しています。人類は、これからの数十年を、さまざまな太陽系天体に探査の足を伸ばしつつ、最終目標としては火星を睨みながら、大規模な人類協働の事業としては当面、月面基地建設の努力を開始する。そういうシナリオを描かざるを得ない局面を近く迎えるのではないでしょうか。

   日本が、この事業に背を向けて内向きの宇宙開発にとどまるのか、それとも、人類が協働して未来を目指す事業に、むしろ提案国として積極的に関わって歴史に寄与するのか、大きな選択を迫られる時期が、ひたひたと迫っています。

(YM)

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