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教材開発物語 注射器ロケット



 2007年9月上旬、JAXA東京事務所で開かれた定例の教材開発委員会で、委員長遠藤純夫より「デジタルカメラの普及によってフイルムケースの大量入手が困難になる時がすぐ来る。室内で発射可能なフイルムケースロケットの後続を開発する必要がある」と課題が提示された。

 九月下旬、これを受けて、小林輝明が現在使われている注射器ロケットを提案した。 JAXA東京事務所で実験した注射器ロケットは、燃料がヘアトニックであったが見事に注射器の筒が飛翔した。しかし、油が机に垂れる、においが室内に残るや、打つと発射台に歪みが出るなどがあったため、改善案が出され、10月上旬に国分寺市の科学センター実験準備室で1号機の改善が図られた。燃料にアルコールを用い、ピストンと筒との間に摩擦が生じるのでワセリンを塗るなどした。打つたびに発射台がゆがむことを改善すれば更に飛距離が伸びるということで、実験用のスタンドにピストンの部分を固定することにした。この会合の時、注射器の先端部から教材用の酸素ボンベで酸素を容易に注入できることから、注射器内の酸素量を決める実験を小林の実験データを基に追試した。

 爆音と注射器の筒が飛ぶスピードが予想以上であったため、酸素を注入して発射させることは講師による演示に留めようということにした。

 これまでに、小林は新宿中で200回を越す発射実験を行い、筒の変形、破損などがないことを確認していたので、次回のコズミックで実施するということにした。こうして注射器ロケットは、2007年10月コズミックカレッジ・ファンダメンタルコースが室蘭で開催された折に初めて登場した。続いて次週、奥州市で、11月は函館、いわき市、沖縄と教材開発委員が講師をしたほとんど全てのコズミックカレッジ会場(14箇所)で使われた。2008年度教材開発委員会は今までに開発した教材の「指導ガイド」を作製し、この中に「注射器ロケット」の指導略案を記載した。その後、注射器ロケットは、教育委員会との連携事業である理科の教員研修の教材として人気を呼び、コズミックカレッジのパック教材となったこともあって、現在は、最も使われている宇宙教育の教材の一つになっている。

2007年10月14日室蘭で注射器ロケットの初飛翔。写真奥が提案者の小林輝明。


教材開発のヒント

 実は、以前都研の教員研究生時代に注射器を使って水の合成装置を開発しました。あるとき爆発のエネルギーが大きすぎて筒が吹っ飛んで自作の教材を壊してしまった経験があり、一般の方が授業で使用するには危険性があるのでその教材は私の中で眠っていました。教材開発委員会で遠藤先生からの提案があったとき、その教材を応用すれば簡単だなぁと思いました。

小林輝明

連続着火装置

 フイルムケースロケットの点火にライターなどを分解して取りだした圧電素子などを使用していました。 注射器ロケットにも連続着火装置が使われていますが、あれは長岡のNPO法人「星空ファクトリー」事務局長の長野親情さんが、家庭用ファンヒーターの室外機の着火装置を外して自作したのが始まりということです。冬季だったのにもかかわらず、ほぼ100%の成功率を示した着火装置を持ち帰り、先方の承諾も得て、「宇宙の学校」の教材として内田洋行を通し20 台作製しました。

山口晃弘