会員コラム

私が宇宙ライターをやめられないワケ


 私は主に宇宙分野のライターをしています。中でも「宇宙に行く」「宇宙でくらす」 ことに興味があり、宇宙飛行士の方達と本を作ったり(「国際宇宙ステーションとはな にか」若田光一著 講談社ブルーバックスの企画・編集、「宇宙においでよ!」野口聡 一宇宙飛行士と共著、講談社など)、ウエブや雑誌に取材記事を書いたりしています。 フリーになってもうすぐ10年。その前は日本宇宙少年団で機関誌を作っていました。

 私自身はアポロ世代でありながら、恥ずかしながら子どもの頃は宇宙に興味もなけ れば、星をみるのが好きだったわけでもないのです。高校時代、物理は大の苦手、大 学では英文学を専攻。編集の仕事をしたいと思っていたところ、たまたま知り合いの 方に声をかけて頂いて、宇宙の世界に飛び込みました。

 宇宙飛行士の方達へのインタビューには団員の子ども達に参加してもらい、一緒に 勉強しました。子ども達の核心をつくストレートな質問に取材の原点を学ばせてもら ったように思います。種子島にも団員達と行き、H-Iロケット打ち上げ成功に喜び を分かち合い、駐車場に寝ころんで天の川を仰ぎ、私も急速に宇宙に夢中になってい ったのです。

 2007年、雑誌PENの取材でカザフスタンのバイコヌール宇宙基地やモスクワの宇宙 服メーカーを訪れたのも忘れられません。ロシアでは取材ができるかどうか土壇場 までわかりません。アポをとったはずなのに取材制限が多く理不尽な思いをすることも 多々ありますが、担当者に気に入られると未公開の場所も次々見せてくれるという幸 運にも遭遇できる。一筋縄でいかないロシアの取材は、スリルがあるからこそ面白い のです。ソユーズロケット打ち上げ後の大宴会は、日本の新年会のノリ。エライ人も ごちゃ混ぜになって赤ら顔で「ウラー!」と乾杯をくりかえし、お祭り騒ぎが続きま す。

  
写真左、ガガーリンの時代からロシアの全宇宙服開発に関わってきたミハイロフ氏。
2007年取材時も77歳で現役エンジニア。ズヴェズダ社で。
写真右、著者近影。モスクワ郊外のツープ管制センターで。
ソユーズ宇宙船と宇宙ステーションのドッキング直前。

 未開拓の場所がいっぱいの宇宙はネタの宝庫だし、様々な切り口が可能です。また 宇宙に挑む人たちの『人間くささ』が私にとって魅力的。だから取材が好きなのです (その後の執筆は苦しく、校正は逃げたくなる)。取材で感じた魅力をどう伝えたら いいか、もっと視野を広げ知識を深め(娘から『お母さんは宇宙バカで地球のことを 知らない』と言われる)、文章力を磨かなければと思っています。もちろん、宇宙の 体験談を山ほど聞いてきた私、実際に宇宙に行き自分の目で暗黒の宇宙空間に浮かぶ 地球を見るまでは、死ねません。

林 公代